トランプはクビになるのか 「ロシアゲート」を解説世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)

» 2017年06月01日 07時17分 公開
[山田敏弘ITmedia]

トランプは挑発的な言動を続ける

次々に疑惑が浮上するが……(出典:トランプ大統領のFacebookページ)

 さらに選挙戦の一時期、トランプのアドバイザーを務めたコンサルのロジャー・ストーンという人物が3月10日、2016年に民主党全国大会をサイバー攻撃したと名乗り出ていた「グーシファー2.0(ロシアのGRUと関係があるとされる人物)」とTwitterでダイレクトメッセージでやり取りしていたことを認めた。また米AP通信は、ポール・マナフォートが2005年にロシアのオリガルヒである人物に対して、プーチンに利益になるよう米政治やメディアを操作すると提案した「戦略メモ」を暴露した。

 3月27日、ジャレッド・クシュナー大統領上級顧問が2016年12月に、ロシア政府系銀行の頭取とも会合していたことが、米ニューヨーク・タイムズ紙の報道で明らかに。また2016年夏ごろに、FBIがトランプの外交アドバイザーだったカーター・ペイジを盗聴・監視する令状を得ていたことも判明。

 5月9日、FBIのコミー長官がセッションズ司法長官らのアドバイスを受けたトランプに更迭される。次のFBI長官はトランプが指名するため、彼に有利にならないよう、共和党員を含む議会議員らが、特別検察官による捜査を要求。セッションズはロシアの件に一切関わらないことになっているため、ロッド・ローゼンスタイン司法省副長官が元FBI長官のロバート・モラーを任命するに至った。

 コミー長官にからんでは、新たな疑惑が浮上する。トランプがコミーにフリン大統領補佐官の捜査中止を求めたとするメモが明らかになったり、ダン・コーツ国家情報長官と、NSAのマイケル・ロジャーズ局長にロシア疑惑を公式に否定するよう要望したことも判明する。

 だがトランプは相変わらず挑発的な言動を続けた。10日にトランプは、ロシア高官らをホワイトハウスに招き、同盟国イスラエルからもたらされた秘密情報をロシア側に漏らしたという疑惑が指摘されている。

 こうした流れを受けて、今後、トランプが弾劾されるかどうかが議論されているのである。ただ弾劾裁判には下院議会の過半数が必要で、その上で上院で3分の2の賛成が必要となるのだが、おそらく2018年の中間選挙までは、現在過半数を占める共和党が協力する可能性は低いとする見方がメディアでは出ている。

 だが議会云々をもち出さずとも、現時点で弾劾裁判から罷免という可能性はかなり低いとみていい。そもそも米国の憲法規定によれば、弾劾・罷免されるためには「大統領、副大統領および合衆国のすべての文官は、反逆罪、収賄罪その他の重大な罪または軽罪につき弾劾の訴追を受け、有罪の判決を受けたときは、その職を解かれる」とされているのだが、今のところトランプの行為はどれにも当てはまらないだろう。トランプの側近などがその罪に当たる可能性は十分にあるが、下院も上院も、トランプ自身がこれらの罪に該当すると証明して弾劾裁判・罷免に持ち込むには無理がある。

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