ポイントは、「エレベーターは設置するけれども、エスカレーターは念頭にない」「ワンスパンの跨線橋について構造計算ができていない」「乗り換え跨線橋の費用詳細については開示しない」「乗り換え跨線橋の設計は年度内に終わらない(実際、終わっていない)」「動く歩道は跨線橋、新幹線プラットホームとも設置しない」「跨線橋の幅と荷重について検討していない」「JR北海道の費用負担が上昇した場合は協議させてほしい」だ。
会見録を読むほど「本当にできるのか」「負担は予算内でまかなえるか」という不安が立ちのぼる。乗り換え利便性に関する重要事項がまったく開示されない中で、会議参加者や経済関連団体がなぜ東案(その2)に合意、賛同できてしまったのか。どうもよく分からない。それだけJR北海道を信頼しているということだろうか。
経済関連団体からの意見として、北海道商工会議所連合会の岩田会頭は、「身体の不自由な方でも安心して移動できるなど、円滑な乗り換えや、全道各地に向けて、バスなど他の交通機関とのシームレスなアクセスが確保される駅であってほしい。東案(その2)の場合、新幹線から在来線の移動距離が長くなることから、動く歩道などの設備を設けていただきたい」と求めている。札幌市長も「利便性の確保やバリアフリー対応に配慮をお願いしたい」と発言している。
エレベーターはバリアフリー法で最低限設置が義務付けられた設備だ。しかし、大勢の降車客をさばくには向いていない。都内の多くの駅でもエレベーターは設置されているけれども、車いすとベビーカーの利用者を優先し、荷物の多い乗客は遠慮して、というより、待ち時間を嫌ってエスカレーターや階段に回っている。
マナーの良い客ばかりではない。足の速い客がエレベーターに殺到すれば、本来使うべき人々が後回しになる。新幹線と在来線の乗り換えにエスカレーターは必須の設備である。そうしないと、JR北海道が主張してきた、「コンコースを分離し、降車客を分散させてスムーズな動線を確保する」とは矛盾する。また主張はウソか、という話になる。
合意内容から外され、ブラックボックスとなってしまった乗り換え跨線橋の実現可能性について、JR北海道は開示すべきだし、それなしで国交省は認可変更を認めてはいけない。
乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。
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