パナソニック若手有志の新たな挑戦 「香り導くサーキュレーター」発売へ南部鉄器と有田焼で作られた「現代の香炉」(5/5 ページ)

» 2018年04月23日 10時07分 公開
[今野大一ITmedia]
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出向を告げた時の「意外な反応」

 当初、小田がパナソニックを出てATOUNに出向したいと上司に伝えたとき、意外な反応が返ってきたという。「パナソニックだと1つのことばかりやっているだろ。一回外に出て勉強してみれば良いじゃない。いろんなことがわかるから」と挑戦を認めてくれたのだ。

 ATOUNに出向すれば、企画、設計開発、営業まですべての業務を自分自身でやらなければならない。その中でも冒頭で触れたように「販路の開拓が一番難しい」と実感した。日本を代表する製造業のパナソニックなら売り先はもちろん決まっているので、事前に何台売れるのかが想定しやすい。しかし今回の商品はどこで売れるのか、どれくらい売れるのかが全く分からなかった。商品を売るためにすべて手探りで進める必要がある。「これが大企業とベンチャーの違いか」と痛感させられた。 

 一商品だけで事業を黒字にしていくのは難しいので、今後は商品を増やしていかなくてはならない。「大変ですがとても勉強になりますね。それぞれの職種でどのような苦労があるかが実体験できるからです。パナソニックにいた時は、相手に『それは無理だ』と言われたときに、なぜ無理なのかが良く分かりませんでした。相手の立場が分からなかったからです。でも今はどういう風にまとめていけばやりたい事業が実現できるのかが少しずつ分かってきています。ビジネスモデルの立て方が分かってきたのです。この経験は、パナソニックという大きな組織に戻ることがあった場合も、役に立つと思います」(小田)。

 「香り輝くサーキュレーター」はホテルなどでの導入も見込んでいる。「ガジェット好きの方にもぜひ使っていただきたい」と小田は微笑む。今までになかった送風技術と伝統工芸が融合した「香り導くサーキュレーター」を、奈良というかつての「日本の古都」から打ち出していく大企業・ベンチャーと組織の枠にとどまらずに、これまでにない商品を生み出してきた小田の挑戦はこれからも続く。(敬称略)

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