――島田さんご自身のキャリアについて聞かせてください。2008年に入社したユニリーバは3社目ですね。人事は一貫した専門分野なのでしょうか。
私は子どものころから「人間とは何か」「何によってモチベートされるのか」に興味があったのだと思います。幼稚園児だったころ、泣いて帰って来て母親の足にかじりつきながら「ママ、親切とおせっかいは何が違うの?」と聞いたことがあるそうです。大人になってからその話を母から聞いて、私は昔から何も変わっていないと笑ってしまいました。おそらく困っている友達に何かをしてあげようとして、「おせっかい!」と言われてショックを受けたのでしょう。同じ言葉をかけたとしても、状況や相手によって反応が違うことに幼い頃から関心がありました。
大学では人的資源管理論を専攻しました。人事や組織に関する学問分野です。新卒でパソナに入ったのは直感からでした。会社説明会で社員同士が話している様子などがとても楽しそうだと感じたからです。その直感が正しかったことは入社してすぐに分かりました。
パソナは若手にもいろんなことをどんどんやらせてくれる社風です。例えば、「米国でこんなリサーチをしてまとめるべきだ」と提案したら、「じゃあ、言い出しっぺのあなたがやって」と任せてくれて、本当に米国出張に行かせてもらいました。私にはとても合っていたと思います。キャリアの最初の4年間をパソナで過ごせたことはとても貴重な経験でした。
――そのパソナを辞めてコロンビア大学に進学したのはなぜですか。
もっと学びたい、という気持ちが高まったからです。コロンビア大学の大学院では組織心理学を専攻しました。私にとって転職や留学は目的ではなく、「やりたいこと」を追求してきた結果です。
大学院を卒業し、帰国後は日本GEで働きました。戦略人事に携わることができたのは最高の体験だったと思っています。恩師と呼べるような素晴らしいリーダーたちとも出会えました。
――当時のGEと言えば、9ブロック(業績の達成度と価値観によって、9つに区分けして点数化した評価方式)に代表される先進的な人事制度で世界的に有名でしたね。島田さんが体験した「戦略人事」とはどのようなものでしょうか。
営利企業の命題であるビジネスの拡大に寄与する人事です。経営層のパートナーとして、人員配置のみならずリーダーシップ開発や組織改革にも関わります。経営戦略とガッチリと結び付く人事を体験できました。
小さな金融ビジネス分野でのHRリーダーをやらせてもらう中で気づいたのは、人事として売り上げに貢献するためには現場の業務をきちんと分かっている必要があるということです。「どうやってお金をもうけているのか」「どんな力があればよりいい商品を生み出せるのか」などの理解は、例えば中途採用の際にも不可欠です。
人事の専門知識とスキルがあれば、どんな会社でも100の力は発揮できるかもしれません。でも、その会社のビジネスを深く理解していなければ、150、200の力を出すことはできません。私は金融取引の現場にも立ち会わせてもらい、専門書も読んだのですが、なんだか頭に入らず残念ながら金融に面白みを感じることができませんでした。
私はもともと、消費財に興味がありました。特に、ビューティーやパーソナルケア(トイレタリー)。小さな商品であっても、多くの人のモチベーションに関わることができるからです。
例えば当社のシャンプー&トリートメント「ラックス ルミニーク」が私は大好きです。疲れて帰って来たとき、お風呂場でこのパッケージを見て香りをかぐだけで気分が上がります。このように自社製品の細部にも愛情と関心を持つことが人事には必要だと感じています。
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