完璧な人間はいない――。だが、仕事も私生活も充実させ、鮮やかにキャリアを築く「女性リーダー」は確実に増えてきた。企業社会の第一線で活躍する女性たちの素顔に迫り、「女性活躍」のリアルを探る。
人事から世界を変える。全ての人が笑顔で自分らしく豊かな人生を送ることができる世界へ――。こんな大望を掲げ、まずは自社の働き方を大幅に変えて、その知見を広く発信し続けている女性がいる。ユニリーバ・ジャパンの取締役で、人事総務本部長の島田由香さんだ。
島田さんが陣頭指揮を執って2016年7月から始めたのがWAA(ワー。Work from Anywhere and Anytimeの意)。働く場所や時間を社員が自由に選べる革新的な制度だ。工場および営業の一部を除くユニリーバ社員が対象で、ほぼ全員が利用している。アンケートに回答した社員の75%がWAAによって「生産性が上がった」と実感。全社に根付きつつある。
WAAを利用する理由は、子育てや親の介護などの深刻なものでなくても構わない。島田さんがこの制度を作り上げたきっかけとなったのは「通勤ラッシュほどムダな時間はない」というシンプルな感情だったと語る。
――満員電車は確かに不快ですよね。でも、毎日乗っていれば慣れていくものではないでしょうか。
私は絶対に嫌です。通勤ラッシュは必要以上に体力を使うし、嫌な気持ちになるので、オフィスに着いてからの生産性が上がるわけがありません。
全員が毎朝9時にそろうことが必要だと言い切れる人はいないはず。出社時間についてディスカッションをすると、「結果さえ出せば無理な通勤をしなくてもいい」という結論にまとまります。
私は以前に働いていた会社でも通勤ラッシュを避けていました。制度がなくても、上司に「今日は家で作業をしてから出勤します」と伝えておけばいいだけです。なぜみんな私と同じようにしないのか不思議でした。最初から「そういうものなんだ」と思い込むのではなく、私はこうしたいという意見を言ってみたらいいのです。「(強いキャラクターの)島田さんだからできる」なんて言われますけど、そんなのは関係ないですよ。
――でも、WAAという制度を作ったことで、誰でも気軽に働く時間と場所を選べるようになったのは事実ですよね。やはり制度は大事だと思います。
そうですね。WAAの仕組みは私が以前から考えていたことですが、全社的に迅速に実施できたのは昨年までの4年間、代表取締役を務めていたイタリア人社長のリーダーシップのおかげです。働き方改革は明らかにトップマネジメントが主導すべきもので、トップが「今後はこの働き方でやります」と宣言すれば会社は変わるのだと実感しました。
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