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「浮いた残業代は社員に還元すべき」 アルプス電気・栗山社長口先だけの「残業減らせ」は無意味(1/5 ページ)

» 2018年09月19日 08時00分 公開
[中西享ITmedia]
phot アルプス電気は自動車やスマホ向け電子部品を製造販売している(同社提供資料より)

 官民で働き方改革が叫ばれる中で、自動車やスマートフォン(スマホ)向け電子部品を製造販売するアルプス電気が、残業時間削減で浮いた人件費を賞与の形で社員に還元する制度を2018年夏から実施した。同年3月からは働く場所や時間にとらわれないテレワークを導入し、仕事と家庭を両立する働き方を全社的に進めている。生産性を向上させながら社員にも喜ばれる「働き方改革」を、先頭に立って実施してきた栗山年弘社長にその狙いを聞いた。

phot 栗山年弘(くりやま・としひろ) 1957年生まれ。80年にアルプス電気入社、2004年に取締役、11年に常務、12年6月から社長。栃木県出身。

――残業代を賞与で還元する制度導入の背景は何か。

 社長に就任した2012年ごろはリーマンショックの後遺症と震災の後ということもあり電子部品事業の売り上げは約2600億円だった。だが、17年度は同5140億円と、約2倍に増やすことができた。

 12年当時はコストの削減ばかりに注力していたのだが、仕事がかなり増えてきたので、さらに成長するためには人手を確保しなければならなかったのだ。当社は宮城県や福島県に主力工場があるので、復興需要が高い東北で人材を集めるにはハンディキャップがあった。人が足りなくなり残業ばかりが増えているといわゆる「ブラック職場」になりかねないので、生産性向上の必要性を改めて痛感したのだ。

 アルプス電気はもともと、大家族主義的な社風があり、リーマンショックの時も雇用には手を付けず、地域と社員を大切にしてきた。だから残業代が減った分を社員に還元することに、それほど違和感はなかった。

 16年の年末から翌年正月の長期連休に、職場の生産性向上のため海外を含めた社員から意見を募集したところ1200通も集まった。内容を分析すると、残業に対する意識改革のほかスマホやITの活用など多数の案が挙がり、16年からスタートした第8次中期経営計画の中でも取り上げることになったのだ。

 これらを踏まえて半期ごとに、前年同期との残業時間を比較して、削減できた費用の3分の1を社員に、3分の1を会社に、残る3分の1を生産性向上のための設備投資にそれぞれ還元するという制度を作り、試行した。17年度上期分から生産性向上分を社員の賞与に上乗せして還元しようとしたものの、売り上げは増えたが残業時間も増えたため、賞与の増加という形では払えなかった経緯がある。

phot アルプス電気センサ製品群(同社提供)
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