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「浮いた残業代は社員に還元すべき」 アルプス電気・栗山社長口先だけの「残業減らせ」は無意味(5/5 ページ)

» 2018年09月19日 08時00分 公開
[中西享ITmedia]
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内部留保に回さず社員に還元せよ

 以上が栗山社長へのインタビュー内容だ。安倍内閣の重要政策として推進してきた「働き方改革」法案が成立し、働き過ぎを防ぐため過剰な残業時間を減らそうと、「残業時間の上限規制」などの施策が導入される予定だ。だが、残業代をカットして浮いた経費の使い道については、ほとんど議論されず見過ごされてきた。

 日本経済団体連合会(経団連)が出している「2018年版経営労働政策特別委員会報告」では、「働き方改革推進の一環として、労働生産性が向上した場合、自社における総額人件費の動向も勘案しながら、何らかの形で社員の処遇改善などへつなげていく方針を明らかにすることが望まれる。賞与・一時金の増額や、手当の創設・引き上げ、基本給の水準引き上げ(ベースアップ)なども選択肢となる」と記してはいるものの、実際に処遇改善に踏み切った企業名はほとんど聞こえてこない。

 大半の企業が内部留保に回すことになりそうだ。

 残業時間規制が適用になると、みずほ総合研究所の試算では、雇用者1人当たりで年間87万円の賃金が減少し、雇用増加などの対策が伴わない場合、雇用者報酬は年間5.6兆円減少し、GDP(国内総生産)を0.3%押し下げるとみている。

 その中で、アルプス電気が賞与の上乗せと言う形で社員に還元する決断をしたのは先見の明がある。栗山社長が指摘したように家族主義的な社内カルチャーがあるからこそ自然な形で還元策が労使で合意された。

 技術屋出身の栗山社長は、新しい技術を取り入れることに積極的で、スマホやタブレットなども新製品が発売されるとすぐに自分で使ってみて、良ければ会社としても使ってはどうかと提案しているという。出張時の新幹線のチケット購入などは、秘書任せにせず、自らスマホで予約するのが当たり前だ。新技術が次々登場する日進月歩の世界だけに、新しいビジネスツールを率先して使おうとする社長の姿勢が会社の経営姿勢にも投影されている。

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