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リクルート、AIにエントリーシートを採点させる真の狙いHR Techは人事にとって魔法か、それとも脅威か(3/3 ページ)

» 2018年09月20日 11時50分 公開
[服部良祐ITmedia]
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問われる企業人事の真の「役割」

 17年にはこの新型AIを採用現場に投入した。リクルートは面接を受けた学生の通過率を特に定めておらず、あくまで自社に合う人材なら人数にこだわらず合格させる方針という。新AIを使った結果、ESを通過した学生の面接での合格率は前年の2倍になったといい、中村さんも「うちに合う学生を高い精度で抽出できるようになった」と評価する。18年にはリクルートHD傘下の大手9社の新卒採用にこのAIを本格導入した。

 「新卒採用をしていると『機械が人を判断するのか』とよく言われる。それでも私たち人事では人間と機械を共存させ、人間がすべき業務に集中できるようにする必要がある」(中村さん)。大幅な人事業務の省力化が期待できるこのAIだが、リクルートが内製化にこだわったのは自社のためだけでない。社内でノウハウを蓄積してシステムを磨き上げた後には、他社にHR Techのサービスとして売り込む方針だ。中村さんも「他の会社にもビジネスの形で(このシステムの)考え方やノウハウを提供したい」と意気込む。

 学生から送られる膨大なESを読み込む作業は長らく企業の採用担当者の負担になってきた。将来、リクルートのAIのサービスが世に出ればその手間を大幅に省けることになる。しかし、それは一方で何となくの「勘や経験」、あるいは学歴や部活動といった表層的な情報のみで学生を判断してきた人事の存在価値が問われかねないことも示唆している。

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