#SHIFT

“会社なら当たり前のこと”をすればうまくいく――フェンシング太田雄貴が挑む「スポーツ業界の健全化」「問題噴出」の構造的背景を聞く(4/6 ページ)

» 2018年10月05日 07時00分 公開
[田中圭太郎ITmedia]

10年で競技人口を6000人から5万人に

――今年も新たな試みをしているのでしょうか。

 今年は「客単価を上げること」をミッションにしています。ジャニーズ事務所の傘下で、ミュージカルなどを上演する東京グローブ座を決勝戦の会場に選びました。席は700くらいで、S席は6000円に設定しています。昨年よりもさらに早い9月1日から販売しましたが、わずか48時間で完売できました。

――会場も斬新ですし、6000円のチケットが48時間で完売するのは、フェンシング人気が高まっている証拠だと思います。わずかな期間で大きな成果が出ていますね。

 こんなことをしている理由は、東京2020オリンピックのときには、午前と午後で1万4000席、9日間で12万席を埋めなければならないからです。そのための答えとして改革を進めています。過去のやり方だと難しいでしょう。フェンシングを見たい人を増やす新しい方策が、今後も必要だと考えています。

phot メディアの注目度を上げたことで観客も徐々に増えている(写真:竹見脩吾さん)

――競技人口を増やすことについては、どのように取り組んでいますか。

 競技人口の増加は、これから戦略的に進めていかねばなりません。日本フェンシング協会に登録している人は現在6000人です。そのうち約半数は高校生が占めています。しかも最も多いのは高校1年生の15歳。そう考えると、やはり部活動がスポーツの競技人口に及ぼす影響は絶大なのです。

 そのため、全国の小学校や中学校を訪問して、フェンシングを体験してもらうイベントを始めました。特に、東京五輪では千葉県がフェンシングの会場になっていますので、千葉の学校には重点的に訪問しています。1校当たり700人の児童や生徒がいたとして、10校回れば7000人ですから、私たちにとっては大きな意味があります。学校を訪問した選手が、東京2020で金メダルを取るのを見たら、きっとフェンシングのファンになってくれるのではないでしょうか。

 それと、競技人口を増やすためにこれから取り組もうと考えているのは、フェンシングの「生涯スポーツ化」ですね。

――なぜ、生涯スポーツ化に取り組まなければならないのでしょうか。

 先ほど触れたように、競技人口は15歳をピークに減り始めます。高校を経て大学まで続けられる選手は、いわばエリート教育ともいえるような教育を受けた人で、その数はわずかです。それ以外にも、もっと幅広い世代の方に楽しんでもらうためには、生涯スポーツ化が必要だと考えています。可能性を感じているのは「フェンシング検定」の導入です。

phot 千葉県の我孫子市立久寺家中学校を訪問した際の一コマ。観戦している際に得点し、生徒が興奮のあまり立ち上がろうとしている(以下、太田会長の提供写真)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.