コンセプトは「『同じ』から『違う』へ、『分ける』から『混ぜる』へ」。「みんな違う」ことを大切にし、あらゆる学年のあらゆる子どもが混ざり合いながら、自由に生きていくための力を育むとする。
カリキュラムには3つの軸を用意した。何をどう、どこまで学ぶかを大人が決めるのではなく、子ども自身に“学びのコントローラー”を手渡す「自己主導」。大人が過度に介入せず、子どもたち同士が教え合い、助け合う環境を作る「協同」。決まった正解へ導くのではなく、未知の問いに向かって答えを求めていく「探究」の3つだ。
一斉授業・画一的なカリキュラム・固定的な学級編成等に代表されるような従来型の学校教育とは一線を画するコンセプト。楽天を辞めてからしばらく思っていた「エリート」や「アジアを引っ張るリーダー」を育成する、という考えも捨てた。本城は言う。
「僕らがやりたいのは、それぞれ一人一人が幸せだと実感を持って生きられるような状況を作るということ。単なるリーダーやエリートの育成は、新たな競争や疲弊を生むだけで、幸せになれるのか分からないし、そういうことをやっている人や学校はたくさんある」
「そうではなくて、それぞれの子が幸せだと思える状況に必要な力を、計画的に身に付けていけるようにしてあげたいんですね。ある子はプレゼンテーションの能力、ある子はプログラミング、ある子は誰とも話さないけれども黙々と何かを作り上げる能力が必要かもしれない。だから、中3で卒業する予定の35人が、35通りの進路を選んでくれることが理想です」
こうしたコンセプトを実現するためのひとつの武器が幼小中の混在である。
幼小中一貫校自体は珍しいものではない。付属幼稚園、小学校、中学校を持つ私立大学はたくさんある。しかし、それらは物理的に校舎が区別されており、同じ校舎で過ごすわけではない。同じ場所で幼稚園から12年間をともに過ごす一貫校は本城いわく「全国初かもしれない」。そのメリットは多い。
まず、校舎や教室、あらゆる設備を共有できるため効率的であり、その分、浮いたコストを教育の本質にかけることができる。さらに、異年齢が混ざりあうことで、創造的なシチュエーションを作りやすいと本城は言う。
「校舎の中では幼児エリアと小中のエリアがありますが、トイレや図書館など本当に出会う場所がたくさんある。カリキュラムでも、中学生の国語と家庭科と美術が合わさったような授業があったときに、幼稚園の子がどんな絵本や読み方だと喜ぶか、すぐに試すことができる。そこから中学生の絵本作りやおもちゃ作りが始まるかもしれません」
「何気ない遊びの場でも、泥と水を使った幼稚園児の遊びに中学生が混ざったら、手助けしているうちに理科の実験につながる発見があるかもしれない。自然な交流から学びや成長が生まれる中で、力を発揮できたり、自分の得意なことを伸ばせたりできるはずなので、そういった意味ですごく創造的な人間に育つのではないかなと思っています」
確かに、風越学園が掲げる「自己主導、協同、探究」につながりやすい環境。カリキュラムを構成する人材面にも強みがある。
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