#SHIFT

わが子を保育園に入れるために父として下した決断待機児童問題を「妻任せ」にするな(4/5 ページ)

» 2018年10月17日 08時00分 公開
[森永康平ITmedia]

点数計算の対象は「勤務場所」と「労働時間」

 現在の日本社会においては、ほとんどの企業が時代の変化に対応しきれていない旧態依然とした勤務スタイルを取っている。そのため、これまで述べてきたような家庭環境の中で、子どもを育てながら働くという生活を、滞りなく過ごすことは極めて難しい。会社勤めでは、自宅勤務はなかなか認められず、有給休暇も時間単位でなく終日か半日でしか取れない。フレックス制度も浸透しきっていないため、どうしても早退や欠勤扱いになるケースが増えてしまう。

 また、取引先や上司・同僚などの関係者も多いことから、急に休暇を取るのも現実的とはいえない。「子の看護休暇」は一応あるものの十分ではなく、有給休暇を活用しても基準よりも多く取ってしまうと欠勤扱いになってしまう。そうなれば、もはや昇格や昇給などの人事評価にも大きく響いてくる。いわば会社を優先した人生設計が立てられない人物には「出世は閉ざされる」のだ。

 私は第1子を保育園に預けることが難航したことをきっかけにして、自分の人生設計について妻とも議論し、よく考えた。どんな選択をするかによって、私だけでなく子どもの将来にまで影響を及ぼす可能性があるからだ。練馬区では勤務場所と労働時間だけが保育園に入園させる点数計算の対象になっている。

 そのような状況のもと、これまでの社会人人生を振り返ると、前述の通り会社員として複数人の子どもを育てながら働くのは厳しく、自営業の方が会社員よりも柔軟性を持って働けるのではないかという結論に至った。だから会社を辞め、会社を作って“社長”になったのである。待機児童問題はどちらかといえば女性の問題、妻が何とかしなければいけないといった話をよく聞くが、夫である男性も私のような選択をすることもできるのではないだろうか。

「偽装離婚」や「偽造就労証明書」も横行

 私は働き方の柔軟性を重視して、たまたま「会社を設立し社長になる」という解決策を考え実践した。だが、世間では子どもを保育園に入れるために「偽装結婚」や「偽装離婚」をする事例もよく聞かれる。また、自営業者が法律上の「労働者」と定義されず、労働時間を計測する必要がないことを利用して労働時間をごまかし、1日8時間働いているような感じで申告して、保育園入園を有利に進めようとする者もいると聞く。雇用者や事業主のみが発行できる「就労証明書」を悪用しているのだそうだ。

 もちろんこうした偽装工作は違法性が高く、犯罪の可能性も高い許しがたい行為である。決して見過ごすことはできないし、擁護されるべきではない。ただ一方で、現在の待機児童問題の深刻さの一端を表しているともいえるのではないだろうか。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.