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離職率28%だったサイボウズは、どうやってブラック企業から生まれ変わったのか幸せと生産性を考える(3/3 ページ)

» 2018年10月22日 06時45分 公開
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もやもやに、いちいち対処する≒多様性を実感し、選択肢を増やす

 この質問責任と説明責任を愚直に実践すると、1つ1つのもやもやに対処していくことが求められます。「えー、そんなの面倒だよ」と思われた方もいるかもしれません。その通り、大変です(笑)。

 しかし、仕事の優先順位を決める裁量が各自にあること、そうした1つ1つの質問に誠実に対応することを優先して良いとされているため、思ったより負担ではありません。大半の質問は仕事に関係あるものがほとんどですので、結果として業務改善などにつながります。

 一人一人の意見に対応していると、1つの制度だけでは対応しきれず、例外を作ることになります。例外だらけの制度はもはや機能しなくなるので、サイボウズでは、いくつかの選択肢を設け、本人に選んでもらう方法をとったり、一人一人のニーズに応じてルールや制度を作ったりしています。

 例えば、出退勤時間は一人一人違います。体調や家族の状況、天候などに合わせて会社に出社するか在宅勤務とするかも、日々個人に任されています。

 このように一人一人のニーズに応えていくのは、手間がかかり、ともすれば生産性が悪くなるのではないかと思えます。しかし、やってみた結果、離職率が下がり、社員の満足度が上がり、売り上げも増えました。生産性の向上にも寄与したと言えるでしょう。

サイボウズの業績と離職率の変化 サイボウズの業績と離職率の変化

 目の前の働く人のもやもやに対応していった結果であるので、「これをすれば売り上げが上がる」とか、「満足度が上がる」とは言えません。しかしサイボウズが、ホワイト企業だと言われるようになった背景には、こうした愚直なコミュニケーションの蓄積があります。逆に言えば、それのみです。本当は何か魔法があったかのようなことを言いたいのですが、残念ながらそのようなものはこの15年弱、なかったような気がします。

 私たちが、「生産性より働く人の幸せを」と思うようになったのは、こうした自分たちのやってきたことを振り返ってきた結果です。

 今回は、サイボウズの事例を話しましたが、果たしてこれは特殊な例なのでしょうか? 実はそうではありません。次回は他の企業の例についても紹介します。

著者プロフィール

なかむら アサミ

チームワーク総研 アドバイザー

サイボウズに人事として入社。その後、広報・ブランディングを経て、現在は、小学生から社会人まで幅広い層にチームワークを教えています。離職率が高い時期の人事経験から始まり、組織の風土が変わっていく様子を体感してきているため、風土改革やチームビルディングの話をする機会が多いです。


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