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午後6時に退勤、学びや家族の時間を――アイコスを生み出す研究所に学ぶ、スイス式の働き方スーパーも日曜は休み(2/3 ページ)

» 2018年10月26日 14時50分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

金曜日は3割が自宅でテレワーク

 佐藤さんは京都大学大学院を修了後、日用品メーカ−などで営業経験を積み、フィリップ モリス ジャパン(PMIの日本法人)に2015年に入社。その後は法人営業を担当していたが、18年1月にCUBEに異動。現在は家族と離れ、CUBEがあるスイス・ヌーシャテルに1年間の期限付きで単身赴任している。

photo CUBEに単身赴任中の佐藤圭吾さん

 赴任後しばらくは、CUBEの研究内容をまとめた冊子を翻訳する仕事を担当。現在の業務は、日本、米国、EU(欧州連合)の屋内環境の喫煙に対する規制を詳しく調べ、リストにまとめることだ。学生時代に生物化学工学を学んでいたバックグラウンドを生かし、アイコスの安全性を検証する実験にも参加している。

 いまの直属の上司はブルガリア人、同僚はドイツ人やフランス人だという。そんな同僚たちと接する中で、日本とスイスの働き方は「家族との時間を重んじる」という面でも異なると感じたそうだ。

 「CUBEでは、家庭の事情があれば在宅でのテレワークが認められています。週に1〜2回は家で働く人が多く、週末が近づく金曜日は、社員の約3割が在宅勤務をしているほどです。家族と過ごすため、約2週間の連続した休暇を取ることも義務付けられています。日本の会社では考えられませんよね」

早めの退社、自分を高める時間に

 一方、佐藤さん自身は家族と離れているため、趣味のトレーニングや、スキルアップに向けた勉強ができるよう、時間を工夫しつつ働いている。

 朝は午前5時半に起きて弁当を作り、午前7時ごろにランニングで出勤。CUBE内のトレーニングジムで45分ほど汗を流したあと、午前8時〜午後6時前後まで働き、帰宅後に語学などの勉強をする――というのが佐藤さんの一日の流れだ。トレーニングのおかげで、現在の体脂肪率は8%だという。

photo スイス・ヌーシャテルの街並み

肌に合わない部分も

 充実した日々を送っている佐藤さんだが、スイスの労働文化の全てが肌に合っているわけではない。

 「日本のビジネス界には、(提出物などの)締め切りや約束を設定すると、それをきっちり守る文化があります。私もかつては帰りが遅くなることもありました。ですが、スイスには『自分の時間を削って残業し、何があっても納期を守る』という風潮はあまりありません。(納期が)延び延びになってしまうケースもあり、その違いに違和感を覚えたこともあります」

 こうして労働文化の良しあしを身をもって知りつつも、いまはCUBEでの生活にすっかりなじんだ佐藤さん。筆者が「現地の方にも話を聞いてみたいので、仲が良い同僚を紹介してほしい」と頼むと、ドイツ人科学者のマーティン・アームステッターさんに会わせてくれた。

 エアロゾルに含まれる成分の分析などを手掛けるマーティンさんは、ドイツとスイスのスポーツ界ではちょっとした有名人。幼い頃に野球を始め、15歳の時にドイツの代表チームに選出。それから15年間、年代別の代表とA代表で投手として活躍し、アマチュア世界大会では日本代表との対戦経験もあるという。

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