加熱式たばこ「IQOS(アイコス)」を生み出し、日本をはじめとする世界各国に広めた米大手たばこメーカー、Philip Morris International(PMI)。10月23日には、充電時間を旧モデルから40秒短縮した「アイコス3」、ヒートスティックを約10本連続で喫煙できる「アイコス3 マルチ」の新モデル2機種を発表し、大きな話題を呼んだ。
PMIはこうした新モデルの開発や、アイコスから出るエアロゾル(蒸気)の安全性の検証といった業務の一部を、本社を置く米国ではなく、スイスの地方都市ヌーシャテルにある研究・開発施設「CUBE(キューブ)」で行っている。
過去の記事で紹介してきた通り、CUBEの内部には、安全性の評価試験で使うたばこを管理する保管庫や、アイコスのエアロゾルを採取・分析するための機械が並ぶ実験室などがあり、内部では科学者たちが研究や論文執筆などを行っている。
機密性が高い業務を担っていることから、取材前の筆者は、その内部では科学者たちが朝早くから夜遅くまで研究に取り組み、ピリピリした空気が漂っているのではないか――と予想していた。
だが実際に中に入ると、そうした先入観はいい意味で裏切られた。
テラス席のあるカフェテリアでは、スタッフが談笑している。4階建ての至る所にフリースペースがあり、アイコスを吸いながらリフレッシュする人もいる。ガラス張りの壁面からは、CUBEに面するヌーシャテル湖を一望できる。
商品開発室や実験室をのぞくと、働く人たちは真剣な面持ちだが、せわしない雰囲気はない。穏やかな空間の中で、個々人がやるべき仕事を粛々とこなしている印象を受けた。勤務時間を厳密に縛る規則もなく、働く場所も自主性に任せられており、残業もほとんどないという。
こうした働き方はCUBEに限られたことではなく、スイス全体に「無駄を避け、しっかり休み、成果を出す」ことを大切にする労働文化があるそうだ。
労働者が働いていい時間は法律で定められており、企業が従業員の就業時間を政府に提出しなければならない規則もあるという。国民に残業をさせないよう、スイスは国を挙げて労働時間を緻密に管理しているのだ。
CUBEで現地の社員に混ざって働く唯一の日本人、佐藤圭吾さんも「スイスは全体的に、日本よりも働く時間がかなり短く、多くの人が午後5時には退社しています。午後6時でも遅いくらいです」と明かす。
「最初は驚きましたが、スーパーマーケットなどの小売店も早い時間帯に閉店しますし、日曜日は定休日です」(佐藤さん、以下同)という。
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