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「転職バブル」は砂上の楼閣 “人間力”があればAI時代も怖くない「淡い幻想」は危険(3/5 ページ)

» 2018年11月14日 08時30分 公開
[森永康平ITmedia]

自分のために「他人の時間を使ってもらう」という思考

 確かに、転職とは不安を伴うものだ。特に最初の転職においては全てが不透明に思えてしまうので、戸惑ってしまうものである。それ故に、友人や知人に相談することもあるだろう。しかし、この際にも、自分の言動には注意をした方がいい。ここから述べるのはビジネススキルというよりは、人として気を付けるべき「最低限のマナー」と捉えていただきたい。

 現職に対する不満や不安を相手に伝えると、相手も親身になって相談に乗り、いろいろなアドバイスをくれるだろう。筆者も相談を受ければ相手の状況に合わせ、自分の中では最適だと思われる解を伝えている。しかし、問題はこの後である。

 相談した後に実際に転職をしようと、そのまま現職に残ろうと、それはその人の人生であり、他人が口を挟むものではない。しかし、最低限のマナーとして、結果については報告すべきだ。また、まだ結論を出していないとしても、その都度アクションをした内容は報告する方がいいのではないだろうか。

 自分の悩みを聞いてもらうということは、自分のために他人の時間を使わせることを意味している。そうであれば、そのときに使ってもらった時間が、どのようなアクションにつながったのかは報告するのがマナーだと思う。筆者の経験上、この部分がしっかりとできている人とできていない人の差は、刹那的な生き方をしているかどうかという点で大きく異なると感じている。

 不満があるから吐き出す、不安があるから相談する。スッキリしたら、また日常に戻る。これが刹那的な生き方である。こういうタイプの人が転職すると、中長期でのキャリア形成が全く意識されていないケースが多い。常に中長期の視点を持ち続けていれば、相談した相手に適宜報告をする必要性は言うまでもなく理解できるだろう。世の中は非常に狭く、相談相手が上司や取引先になることもあり得る。不義理をすることはビジネスにおいて非常にリスクが高い。

 こういうことを言うと、何を古臭いことを言っているのだ、上から目線の発言だ、とお叱りを受けるかもしれない。だが、前述の内容とつながってくるのだが、自動化の時代が進む中で、最後まで残り続けるのは「人間にしかできないこと」なのだ。このようなマナーやモラルを蔑(ないがし)ろにしているようだと、それこそ自動化の波にのまれ、現状よりも悪い条件で働かざるを得なくなるのかもしれない。

photo 事務処理などの仕事がAIに代替される中、大切なのは「人間にしかできないこと」だ(写真はイメージです)

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