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「転職バブル」は砂上の楼閣 “人間力”があればAI時代も怖くない「淡い幻想」は危険(4/5 ページ)

» 2018年11月14日 08時30分 公開
[森永康平ITmedia]

経営者から見た世界

 他人に何かをしてもらうときは、自分の目線だけでなく、相手の目線で考えて行動するのが賢明だ。これは、何も転職の相談に限った話ではない。全てに通ずる話である。例えば、営業やマーケティングの仕事をしていても、自分の目線で考えれば「モノを売る」のが目標であり、どうすれば売れるかを考えるだろう。しかし、同時に相手の目線、つまり顧客側の視点に立って戦略を練ることも実は重要なのだ。

 自己中心的な発想は捨てて、常に相手が誰で、その人は何を考えているのかを意識する習慣を身に付けることが肝要だろう。

 自分の目線だけでなく相手の目線を、という話をしたので、もう一つ考えてみたい。そもそも「転職する」というのは労働者の目線なのである。それでは、「転職」を経営者の目線でみたときに、一体どう映るのだろうか。

 主戦力と考えていた社員や、新卒から育て上げた社員が自社を去っていくのは非常につらいことだろう。まして、競合他社に移るようなケースは本当につらい。一方で、大きい会社であればあるほど、出ていかれても痛くない社員もいるのだ。出ていかれても痛くない社員というのは能力が低い場合ももちろん当てはまるが、事業にコミットもせず愚痴ばかり言って周りのやる気を下げるような社員だ。

 これまで述べてきた全ての要素を含む例を紹介しよう。会うたびに会社の愚痴を言い、転職する、起業するとは言うものの、延々と現職にとどまっている人がいたとする。私は、転職や起業をすると言ったら必ずそうしなくてはいけないとは全く思っていない。だが、そのようなことをずっと口先だけで言い続けているのは問題に思える。

 現職の愚痴を散々言いながら、いつでも転職・起業はできるのだと言いふらす。にもかかわらず現職にとどまっている社員は、経営者の目線からすれば最も迷惑な社員なのだ。1円でもお金をもらって働く以上、プロフェッショナルであらねばならない。転職や起業に対していつまでも踏ん切りがつかないのであれば、現職にとどまるのがベストだ。その程度の覚悟しかないのであれば、新しい環境に踏み出しても、明るい未来はほぼないからである。そして、給与を支払ってもらう以上は、現在の職場で職務を全うすべきなのだ。

photo 踏ん切りがつかないのであれば、現職の仕事を全うするしか道はない(写真提供:ゲッティイメージズ)

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