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» 2018年11月27日 08時00分 公開

パーフェクトウーマン 女性が拓く新時代:育児でブランク14年 障がい者のシングルマザーが楽天子会社の副社長になるまで (1/5)

完璧な人間はいない――。だが、仕事も私生活も充実させ、鮮やかにキャリアを築く「女性リーダー」は確実に増えてきた。企業社会の第一線で活躍する女性たちの素顔に迫り、「女性活躍」のリアルを探る。

[大宮冬洋,ITmedia]

パーフェクトウーマン 女性が拓く新時代:

完璧な人間はいない――。だが、仕事も私生活も充実させ、鮮やかにキャリアを築く「女性リーダー」は確実に増えてきた。企業社会の第一線で活躍する女性たちの素顔に迫り、「女性活躍」のリアルを探る。


 「この本を読んだ母から『私(の育て方)が悪かったんだね』と言われました」

 ここは東京・二子玉川にある楽天クリムゾンハウス。多様な人種が忙しげに行き交い、掲示板には英語が目立つ。打ち合わせをしている人もいるが、ほとんどの人はPC画面に向かって業務に没頭している。

 若い活気が漂う社内でも、今回取り上げる50代後半のはずの川島薫さんは全く浮いていない。見た目が若々しいだけでなく、言葉が率直で力強く、嫌みや曖昧さはみじんもない。人を引き付ける魅力にあふれているのだ。著書『障がい者の能力を戦力にする』(中央公論新社)も、自身のキャリアや考え方が驚くほど赤裸々に書いてある。川島さんの母親が軽いショックを受けるのは当然だろう。それでいて、人間が持つ能力を信じて他者と一緒に働くことの喜びが全編から伝わってくる名著だ。著者プロフィールをそのまま引用させてもらおう。

 <川島薫(かわしま・かおる) 楽天ソシオビジネス副社長。1962年東京都生まれ。0歳の時に姉の乳幼児健診に一緒に連れて行かれ、「先天性両肢関節脱臼」との診断を受け手術をすることに。完治はしなかったが障害者手帳をとらないまま、高校卒業後の80年に教育事業出版社に就職し、経理業務に従事。85年の結婚を機に、主婦業に専念する。87年に長女出産後、右肢関節が悪化し再手術。89年障害者手帳を取得。離婚後の99年より空調メーカーのコールセンターSV(スーパーバイザー)として8年ほど勤務した後、CADの訓練校に入学。訓練校の先生の勧めで東京都障害者合同説明会に参加し、2008年楽天ソシオビジネスに入社。13年、今度は左肢関節の人工肢関節設置換術を受け、現在も経過観察中。13年に取締役に就任し、18年6月より現職>

 この経歴を見ると、障がい者であるだけでなく、大学卒ではなく、シングルマザーでもあり、しかもキャリアには14年間ものブランクがあることが分かる。三重苦ならぬ四重苦の女性なのだ。その川島さんが楽天グループ子会社、楽天ソシオビジネスの副社長となり、約170人の部下が働く会社を取り仕切る実質上のトップにまで上り詰めた。原動力を探りたい。

phot 従業員が書いてくれた似顔絵とともにほほ笑む楽天ソシオビジネス副社長の川島薫さん。育児ブランク14年、「先天性両肢関節脱臼」という障がい、シングルマザー、高卒という“四重苦”を乗り越えて会社の実質上の「トップ」に上り詰めた異色の経歴を持つ

早く自立して親から脱却したかった

――高校を卒業してからすぐに働き始めたのはなぜですか。

 早く自立して親から脱却したかったからです。私は「先天性両肢関節脱臼」という股関節が脱臼した状態の疾患を持っていました。先天的に足が悪いので、母親から「これはやっちゃダメ」と言われ続けて育ったのです。でも、子どもがじっとしていることはできません。運動量の多いテニス部に入るなど、あえて反抗していました。1歳上の姉は健常者で、「何でもやらせてもらえてズルい!」と思っていたのでしょう。

 進学に関しても、母は「男性は大学に行くものだけれど女性は商業高校で手に職を付けるべきだ」といった古い考え方の持ち主でした。私にはやりたいことがたくさんあったのですが、そんな母親に反抗したり説得したりすることが面倒くさくなり、高校卒業後に働き始めて自立しようと思ったのです。

――ご著書には、23歳で結婚をして24歳で長女が生まれたタイミングで仕事を辞めたと書かれてあります。さらに2人の娘さんも生まれたとはいえ、その後の川島さんからは14年間も専業主婦をしていたことが想像できません。

 結婚して仕事を辞めたのは、元の夫が、女性が外で働くことを嫌がったからです。離婚を決意した半年ぐらい前から再び働き始めました。

 再就職先は空調メーカーのコールセンターです。派遣社員のオペレーターとして入り、半年後には新人教育とクレーム対応を担うスーパーバイザー(SV)になりました。

 そのうちに大手メーカーなどの法人対応の部署に移るように打診され、仕事はよりハードになりました。お客さんからの問い合わせでは、機種の型式や部品名称などの専門用語ばかりで、「のちほど調べて電話をかけ直します」と言っていたら仕事はたまっていく一方なのです。私は負けず嫌いなので、製品の配電図や展開図を勉強して、技術的なことに関してもダイレクトにお答えできるようになりました。

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