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育児でブランク14年 障がい者のシングルマザーが楽天子会社の副社長になるまでパーフェクトウーマン 女性が拓く新時代(3/5 ページ)

» 2018年11月27日 08時00分 公開
[大宮冬洋ITmedia]

障がい者の採用面接をして覚えた「違和感」

――障がい者の人たちの採用面接をして、違和感を覚えたことも多かったようですね。

 私は生まれつき足が悪かったのですが、自分を障がい者だと思ったことはありませんでした。障害者手帳を取得したのも、正直なところ、自動車免許を取るときに助成を受けられると聞いたからです。

 面接官をしていて、「この人は何でこんなに後ろ向きなんだろう?」と感じることが少なくありませんでした。普通、働きたい職場に行くときは向上心を持っているものですよね。でも、「残業は避けたい」などの配慮してほしいことを先に言う人が多い。仕事を頑張るつもりがないのかな、何でもっとチャレンジングに物事を考えられないんだろう、と不思議でした。

 考えてみると、彼らは主体的に責任感を持って働いた経験がないのです。そのように働かせてもらえなかった、と言ったほうが正しいかもしれません。

 だから、楽天からやっとの思いでもらってきた仕事を任せても、不安になって混乱してしまうのか、とんでもない間違いをしてしまう社員も当時はいました。今でも覚えているのは、海外発送の委託を受けたときに、ゲーム機本体とゲームソフトの商品をそれぞれ別の宛先に送らないといけないのに、なぜか入れ違えて発送してしまったのです。依頼してくれた人からは「どうやったらそんな間違いができるんだ!」と怒鳴られました。

 でも、こういう失敗経験が役に立つのです。「次からはこうしなくちゃ」という学びになるでしょう。失敗を繰り返しながら、この10年間で責任を持って仕事をやってくれる社員がずいぶん増えました。

――社員の人たちを叱ることも多いそうですね。

 私は感情では叱らないようにしていますが、人への思いやりがない態度はすごく嫌いです。どんな仕事にも相手があるので、それを意識して働かなければならないと思っています。

 外部の方を招いた社内イベントで会場案内の仕事を請け負ったとき、占有エレベーターの昇降係は30分交代でシフトを組みました。ずっと狭いエレベーターに乗っていると体がおかしくなってしまうからです。だから、5分前には絶対に持ち場に来るようにと口を酸っぱくして何度も言っていたのです。でも、交代時間が過ぎても来なかった社員がいました。問い正すと、「だって他の仕事で忙しいんですから」と言い訳をする。意味が分かりません。「仕事に『だって』はない!」と厳しく叱りました。

――叱る相手が障がい者であることで遠慮は生じませんか?

 私は社員たちがどんな障がいを持っているのかは把握しています。無理な仕事はアサインしていません。それでも他者への思いやりが感じられないような言動をしたときは叱ります。それで私が嫌われることは一向に構いません。

 副社長という立場上、約170人の社員は全て自分の部下です。それぞれのスピードでいいので、仕事を通じて少しずつでも成長させてあげたい。今では各事業部の部長やマネジャーが育ち、私が現場の社員たちを公式に面談する機会はほとんどありませんが、雑談ベースで声をかけるように心掛けています。「こないだ休んでいたけれど大丈夫?」「最近、頑張っている?」「ちゃんと眠れている?」といろいろです。

phot 楽天ソシオビジネスのオフィス前で。楽天グループ社員を対象に、人事・総務・経理のほか各種手続き関連の総合窓口を運営
phot 窓口以外にも、楽天グループの人事・総務・経理に関連する一般事務処理や書類チェック・管理・データ入力などもしている

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