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育児でブランク14年 障がい者のシングルマザーが楽天子会社の副社長になるまでパーフェクトウーマン 女性が拓く新時代(2/5 ページ)

» 2018年11月27日 08時00分 公開
[大宮冬洋ITmedia]

派遣社員から正社員に

――そこまで活躍していたのに8年間も派遣社員のままだったのはなぜでしょうか。

 子育てが一番大変な時期と重なったからです。離婚をしたとき、長女が中学生で次女は小学生、三女はまだ2歳でした。

 派遣社員とはいってもスーパーバイザーになってからは帰りが遅くなることも多くて、特に長女には寂しい思いをさせてしまったと思っています。長女は父親っ子で、次女とは6歳も年が離れています。彼女が小さいころは親子3人でキャンプや旅行にもよく行ったのです。それが急に私と元夫が離婚をして、妹を保育園まで迎えに行かされるようになり、自分は全然かまってもらえなくなってしまった。反抗期に突入したこともあって家に帰って来なくなってしまったのです。

 私には長女を探しに行くような時間はありません。「母親の私がこんなに頑張っているのに何で分かってくれないんだろう」と思っていました。ずいぶん後になってから、一番寂しい思いをしている長女の気持ちを、私が分かってあげられなかったのだと気付きましたが……。

 女性同士でぶつかるときは極端にぶつかってしまうものです。私が何かを言えば言うほど長女は逃げていく。お互いに時間が必要だったんですね。長女が子どもを作って家に帰ってきたのは19歳のときでした。

 今では娘たちは3人とも自立しています。長女の子どもはもう11歳です。かわいいですよ。

――コールセンターの仕事を辞めた後、CADの訓練校を経て、立ち上がったばかりの楽天ソシオビジネスに入社します。障害者雇用促進法に基づく特例子会社ですね。従業員は親会社に雇用されているものと見なして、現行で2.2%以上と定められている障害者雇用率に組み入れることができます。川島さんの入社動機を教えてください。

 訓練校の先生から、「川島さんは足が悪いから、今後のことも考えると配慮をしてくれる会社に行ったほうがいいのではないか」と勧めていただいたのがきっかけです。私は好奇心が旺盛なほうなので、2007年当時はまだ社会に浸透していなかったインターネットショッピングの仕事は面白そうだと思っていたのもあります。

 何もないところから始める会社ならば、入社してもまだ気楽そうだなとも思いました。でも、最初は仕事が本当に何もなくて、出社してもデスクのPCで楽天市場のサイトをずっと見ているだけ。買い物という目的がないと見飽きてしまいます。

 そのうちにコールセンターでマネジメントをしていた経験を買われて、新規採用の面接も手伝うようになりました。楽天の人事や総務部門に営業をかけて、少しずつ仕事をもらえるようになったのは入社1年後ぐらいのことです。

 楽天の社員が入社したり退職したりする際、会社用のPCを届けたり回収したりする作業も請け負いました。デスクトップPCの本体と、ディスプレイとキーボードなど数人分を1度に台車に乗せて運んでいた従業員が、どこかに台車をぶつけたせいで、PCを落として壊したことなどもあり、そのたびに私が叱られて謝っていた思い出もあります。

――正社員として雇用されることに派遣社員時代との違いを感じましたか?

 派遣社員は派遣先でどんなに頑張っても、時給が上がるか否かは派遣会社のさじ加減で決まります。正社員として働くと、仕事で成果を上げたら評価をしてもらえて賞与に反映されます。当時はまだ三女が小学生で教育費もかかっていたので、正社員になれたことは生活を安定させる意味でありがたいことでした。

phot 障がい者の従業員らが運営するコンビニのパン売り場
phot 障がい者の従業員が作ったハムとチーズのパン

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