――世界の企業を見ていて、「ここの会社の働き方は優れている」と思った企業はありますか?
多くの企業がありますが、PhilipsやNovartis International AGなどが挙げられます。やはり自分たちのビジネスにとって、働き方がコアな要素であると理解している会社は、いい会社だと思います。ITであればLinkedInやGoogleですね。MSD、LEGO、VOLVO、銀行であればMacquarie Bank、Commonwealth Bank of Australia、Rabobankといった会社もありますね。ワークスタイルが自分たちのビジョンを達成するために大切だと気付いていることが重要なのだと思います。
こうした企業はCPO(Chief People Officer)という役職を作り始めています。単なる人事ではなく、従業員の働く環境や制度、育成、リーダーシップ、訓練などに責任を持つポジションです。個人と組織が一体となり、双方の成長に貢献しあう「エンゲージメント」や、ダイバーシティーもその領域に入ってきます。
ヒューマンリソースというと、いかにも「会社の資産」という響きがありますが、人間そのものに対してどうすればいいかを考えていくスタンスがCPOにはあります。
――評価の仕方が難しいこともあり、成果主義はなかなか日本の大企業には根付いていない現実があると思います。どのように浸透させていけばいいのでしょうか?
成功例はいくつもありますが、例えばトヨタの「評価のプロセスを管理する手法」は、多くの企業にとって参考になると思います。トヨタの生産方式が優れているのは、最初に達成すべき数値を、マネジャーと部下との間で合意することができるからです。つまり成果に対して数値目標を持てるということですね。
成果に対する目標数値をどう持つかがとても重要なのです。目標や数値をいかに持つかを互いに握れていれば、必ず成果主義を浸透させることができます。その意味では成果主義というよりも、成果に対する目標をどう作るかが重要なのです。
例えば営業職の評価指標としては、四半期にいくら売り上げをあげたかということがあるでしょう。マーケティングや人事など他の職種にも目標を設定することが重要です。「これをやればOK」というマジックのような解決策はないのですが、今の日本企業にも参考とすべき例はあるのです。
そして成果主義を導入するときに、なぜ導入する必要があるのかを、マネジャーだけでなく個々人が考える必要があると思います。
――なるほど。マネジャーだけでなく、一人一人がなぜ変わらなければいけないのかを考えて、いわゆる「腹落ち」しないといけないのですね?
その通りです。だからマネジャーは、「なぜ自分たちの働き方を変えることが必要なのか」をチームメンバーに聞き、考えさせる必要があると思います。
今の時代、マネジャーが全てに対して一人で考えて、答えを出す時代ではなくなっています。お互いにフラットな議論をして答えを作っていくべきであって、マネジャーが一人で悶々と抱え込んで考える必要はないのです。皆で話し合いながら、どういう目的で、なぜ仕事をするのかを考えることがプロセスとして重要なのです。
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