退職金離婚に陥らないための投資経験値渋谷豊の投資の教室(2/4 ページ)

» 2018年12月13日 09時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

サイトウ: ということは、どのくらいの額を投資するか? は間違っている?

渋谷: そうです。いくら投資すればいいんですか、という質問をすること自体を考え直さなきゃいけません。まずは、「どの時点でいくら欲しいかというのを、あなたは思い描いて質問していますか」と。本来はそのためにお金は準備するものなんです。ただ闇雲に投資しろと言われたら、いま期待できる収益率は5%と言われて、なにも考えずに投資してしまいます。でも5%の期待収益ということは多分15%くらいのリスク、標準偏差を伴っているんです。

 サイトウさんは少しコンサバティブな方なんで、5%の期待収益でも、100万円が90万円になったら怖くなって売っちゃうのではないかと思うんですよ。投資期待の5%ありきでいくと、どのくらいのリスクがあるかを考えずにやっている可能性があるわけです。

 自分のゴールがあって、このぐらいの資産を目指して、このぐらいのペースで増やしていこうという計画をまず立てる。その上で、リスクのことが分かってくると、これぐらい上下の変動は受け入れられるから長期でやっていこうとなる。投資の期間がこれくらいなので平均して年間このくらい増えればいいんだ、それにはリスクはこのくらい伴っているんだ、と分かってくればうまくいきます。

 リスクは分かっていないからこそ怖いんです。米国の大投資家ウォーレン・バフェットが言っているように、リスク自体が問題ではなくリスクがどこにあるのか分かっていないこと自体が問題なんです。

サイトウ: 最悪の場合にどうなるのか分かっていれば、ばくぜんと怖いというよりも、心の準備もできますものね。

渋谷: 日常生活でも同じようなことがあります。同じお化け屋敷も1回目に入るとのと2回目に入った場合の恐怖感は圧倒的に違いますよね。それは、2回目にはどこにリスク=恐怖のポイントが分かっているから怖くないんです。

 また、長期投資には場数を踏めるという大きなメリットもあります。例えば、少し前に流行った退職金離婚という言葉があります。2000万円の退職金をもらったとします。立派な企業の部長さんとか課長さんとかをイメージしてください。部下も結構います。自分が「飲み会に行くぞ!」といえばみんなついて来てくれるような中心的な存在です。いつも、部長! 部長! 課長! 課長! と言われて、会社ではなんでも知っている頼れる部長さん課長さんと言われている。家に帰ったら、それこそ家長さんで、一家の大黒柱です。

(写真提供:ゲッティイメージズ)

 そんななんでも知っている人のはずなのに、実はお金の事についてはあまり知らない。そりゃそうです。会社ではお金のことを教えてくれないからです。でも、そんな状況で念願の退職金2000万円が振り込まれてきました。そうすると金融機関の豪華な支店長室に呼ばれて、支店長から「◯◯さん、お疲れ様でした。実はウチの銀行にこんなプランがあって……」と言われて、「ほうほう。そうかね。じゃあお任せするよ」と言って少し知ったかぶりをしてにすべてを任せるわけです。

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