日本で暮らしているのに海外投資が必要な2つの理由渋谷豊の投資の教室(3/3 ページ)

» 2018年12月27日 08時04分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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為替の変動リスクを通貨を分散することで減らす

サイトウ: なるほど。僕らの給料は増えていないけど、海外ではみんな押しなべて給料が増えているんですね。それは確かに、日本に旅行に来たら「安い!」と思うわけだ。

渋谷: さらに資産をすべて円で持っているとします。現在の価値で100万円持っていても、円安が進んだときに世界基準で見れば「お前の100万円は100万円の価値はない」と言われてしまうかもしれません。円以外の外貨も持っていれば、円安で円の価値が下がることに対して、外貨の価値が上がるので全体の保有している資産の価値を維持することができます。だから外貨投資、国際分散投資というのは投資の世界でいうとマストに近いのです。

 日本が意気揚々とした国で、これからも通貨がどんどん強くなっていく国ならば、円で持っていてかまいません。本当は自国通貨が強くなることは大事なことなのです。しかし日本人は円安が良いと信じ込まされています。例えば、円安になったら輸出企業の業績が伸びて景気が回復するとか。でも、日本の輸出依存度は約15%程度。だから円安になれば日本が完全回復するほどの貿易立国ではもうないのです。だとすれば、円安を手放しで喜ぶことはあまりにも無邪気です。

 例えば一生懸命貯めた100万円を、海外に持っていくと50万円分ぐらいしか価値がない。通貨が安くなるというのはそういうことです。それを喜んでいる国民は世界にあまりいません。ではれば、せめて円安になる状況を想定して、一部を外貨で持つことで、外貨の価値が50万円が100万円に、円の価値が100万円から50万円になっても、合わせてトントンだよねということを通貨の分散で目指すべきです。

サイトウ: 今の日本の状況は、長年円高傾向が続いてきたけれど、何かの拍子に円安、インフレに向かうかもしれない。だからそのときに困らないように、一部を外貨で持っておこうということですね。でも外貨といってもいろいろな通貨があるじゃないですか。米ドルだけでいいんのでしょうか?

渋谷: 米ドルが今後もずっと基軸通貨であるという保証はありません。もしかしたら中国の元に変わるかもしれないし、ユーロに変わるかもしれません。でも米ドルが基軸通貨たるゆえんは、貿易量、つまり決済金額が圧倒的に多いことにあります。つまり基軸通貨の原則である決済通貨として最も適切なのです。決済額は、米ドル、その次に多いのはユーロ、そして3番目が円なんです。

 取引量が多いということは、その取引をやらざるを得ないという実需の部分と、実際にその通貨は使い勝手がいいという2つの意味合いがあります。ということでやっぱりドルというのは国際的な通貨なのです。

 通貨には流動性リスクというものもあります。持っている物が即座に売れないというのは結構なリスクです。急に下がり始めたものを即座に売ればわずか10円のマイナスで済んだものが、買い手が見つからずにおろおろしていると30円のマイナスになっていたということがあります。売れる相手が少ないということは保有者にとってすごく不利なんです。だから取引量の多い通貨はやはり信任が高いのです。

 分散投資の世界では、ドルやユーロという信頼の高いものに任せるというのがオススメです。一方で日本円よりも取引量が少ないもの、イギリス・ポンドとかオーストラリア・ドルとかになると、高金利のイメージがありなじみはあるものの、実は日本円よりも決済されている量が少なくて、国際的にいうと決してメジャー通貨ではありません。自国のお金よりも流通量の低いものに、そんなに積極的にお金を預けますかというと、そこは慎重に考えてほしいと思います。

 自分たちよりも価値の高い通貨、価値の高いというのは値上がりするという意味ではなくて信頼性の高いものに預けるという意味があると思います。円の不安を多く話しましたが、日本は、国際的に結構いい位置にいるんですよ。自信を持っていい。世界一のパスポート、世界3番目の通貨、そして世界第3番目の経済大国。かなりいい国ですよ。

話し手 渋谷豊

ファイナンシャルアカデミー取締役。中上級者向け講座では教壇にも立つ。大学卒業後、邦銀勤務を経て、慶應義塾大学大学院 経営管理研究科(MBA)を修了。その後、米系、仏系銀行のプライベートバンク部門にて、富裕層の資産運用業務に13年間従事。2008年の世界的金融危機を体験し中立的な金融アドバイスの必要性を痛感し、独立系投資顧問会社代表に就任した後、さらに幅広い層に金融経済教育を広めるためファイナンシャルアカデミーに参画。現在は投資信託スクールでの講師のほか、Jリーグの選手への講演等も行う。ファイナンシャルアカデミー

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