インタビュー
» 2018年12月30日 05時00分 公開

苦戦する電通、ホワイト化するワタミ:「24時間戦えますか?」から30年 平成の日本から“ブラック企業”は減ったのか (2/5)

[濱口翔太郎,ITmedia]

モンテローザはパクリと残業をやめるべき

――スルガ銀行以外に、18年に問題だと感じた企業はありますか。

新田: モンテローザですね。同社では居酒屋「笑笑」の店長だった男性が過労のため開店前に倒れ、不整脈で死亡する事故がありました。これが発生したのは17年ですが、18年に入って被害者のいとこが告発漫画を発表したことで話題となりました。

 私は以前から批判してきましたが、この会社は本当にひどい。居酒屋の店員を開店から閉店まで拘束するなど、労災事案になるようなハードワークを強制しますし、「和民」をパクった「魚民」、「月の雫」をパクった「月の宴」など、他社チェーンに酷似した名前やコンセプトの店を多く展開しています。これでは、従業員やパクられた側の会社が気の毒だとしか言いようがありません。

 労働問題だけでなく、パクリ問題で裁判沙汰になるケースもあるため、早急に体制を改善すべきです。

平成トップクラスの“ブラック企業”はどこだ?

――ここまでは18年の“ブラック企業事件”について振り返ってきましたが、少し目線を変えて、平成の30年間で印象に残っている事件についても聞かせてください。

 企業体質、コンプライアンス管理、カネの流れに問題がある、広い意味で“ブラック”な企業が引き起こした事件も含めると、「リクルート事件」「雪印集団食中毒事件」「東京佐川急便事件」「ライブドア事件」「村上ファンド事件」「三菱自動車リコール隠し事件」などでしょうか。本当に多くの事件がありましたね。

 労働環境に問題がある、一般的な“ブラック企業”が引き起こした事件としては、「名ばかり管理職」という言葉が広まる契機になった「日本マクドナルド割増賃金請求事件」も忘れられません。

 ただ最も印象に残っているのは、15年に電通で新入社員が過労自殺したことです。この問題を機に、大企業を含むビジネス界全体が「働き方を変えないとマズイ」と危機感を感じましたし、国も働き方改革関連法の制定に乗り出しました。

 また、それまで社会全体に残っていた「多忙な大企業では過労死はたまにあってもおかしくない」「過労死する人は忙しいことを分かっていて入社したのだから仕方ない」といった概念が、明らかな間違いだとして認識されるようになりました。

photo 明かりが灯る電通の本社ビル(=2017年12月撮影)

 電通以外では、精密機器大手のオリンパスが行っていた、産業医とぐるになった不当解雇問題が特に悪質でした。上司が取引先の社員を不正に引き抜こうとしていたことに気付いた社員が、社内のコンプライアンス相談窓口に相談したところ、窓口の担当者が、あろうことか上司本人に相談があった旨を漏らしたことに起因する事件で、7〜8年前に大きな批判を集めました。

 上司はその後、窓口に相談した社員に対し、しつこく「(メンタル不調に陥っているので)産業医の面談を受けてほしい」などと指示。産業医は上司と裏で手を組んでおり、受診した社員に「重度のうつ病だから退職すべき」などと誇張した診断を下し、合法的に会社から追い出そうとしました。その後、オリンパスは社員から訴えられ、敗訴しています。

 この事件は、企業と産業医の関係性に焦点が当たるきっかけとなりました。産業医の中には、本業でしっかりと実績を残し、企業と対等な立場で契約を結んでいる医師もいますが、中にはそうではなく、本業がもうかっておらず、食いつなぐために産業医をやっている医師もいるのです。後者は生活がかかっているので、企業の言いなりになって“ブラック”な所業に手を染めかねないことが、この事件で明らかになりました。

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