福岡市長の挑戦 東日本大震災を通じて見えたSNSの有用性と行政の課題とは8年間で人事異動8回(2/5 ページ)

» 2019年01月01日 09時00分 公開
[中澤彩奈ITmedia]

市長就任3カ月目の大災害

 「大震災が発生した時は市長に就任してまだ3カ月しか経っておらず、SNSの活用どころか市長としての日常業務にも慣れていない時期でした」と高島市長は当時を振り返る。

 震災後にSNSを確認してみると余震や被害状況、家族・友人の安否確認に関する投稿で溢れかえっていた。そこには悪質なデマ情報も多く混ざっており、混迷を極めた状況だったという。

 テレビを付ければほぼ全ての局が震災のニュースを取り上げていた。一見すると十分過ぎるほどの情報が事細かに報道されているようだったが、どれも同じような内容に偏っていたという。番組構成が視聴率を意識したつくりになってしまい、被害が大きいエリアや印象深いトピックなどばかりが報道されていたのだ。

 元々キャスターだった高島市長はメディア側の事情も把握している。報道内容に優先順位を付ける際には仕方のない判断であることも理解できたという。

 「ですがSNS上の投稿を確認していると、テレビから得れる情報だけでは情報を求める側のニーズを満たしていないことに気付いたんです。こんな時こそ市長である自分が“本当に求められている情報”を発信する必要があると感じました」

 そこで、高島市長は個人の公式Twitterアカウントを通じて震災関連の情報を発信することを試みた。

 「とにかく日本全体が混乱していた時でしたから、『シンプルに』『正確に』を心掛けて投稿するようにしていました。福岡市には被災地のために何かできないかと考える人もたくさんいましたので節電情報や献血情報、支援物資の送り先など、事実確認なんかも自ら行いつつ福岡市民が求めているであろう情報を発信し続けました」

 すると高島市長のSNSのフォロワーは瞬く間に急増し、ツイートも爆発的に拡散された。氾濫する情報に困惑していた市民が高島市長のSNSに集まったのだ。

 「情報が錯そうしている時には首長によるコメントが求められていることが実感できた瞬間でした。SNSが有事の際の有効な伝達手段の一つであることも証明されたのではないでしょうか」

photo 福岡市(画像提供:Getty Images)

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