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» 2019年01月22日 07時00分 公開

ショボいけど、勝てます。 竹島水族館のアットホーム経営論:応募殺到! “水槽掃除”と“POP作成”を客に手伝わせる水族館の「ファン作り戦略」 (1/5)

休日には入場待ちの行列ができ、入館者数の前年比増を毎月達成している水族館が、人口8万人ほどの愛知県蒲郡市にある。飼育員たちのチームワークと仕事観に迫り、組織活性化のヒントを探る。

[大宮冬洋,ITmedia]

ショボいけど、勝てます。 竹島水族館のアットホーム経営論:

人口8万人ほどの愛知県蒲郡(がまごおり)市にある竹島水族館は、お金なし、知名度なし、人気生物なしという、いわゆる弱小水族館だ。だが、条件面だけ見れば「ショボい」としか言いようのないこの水族館は、わずか8年前は12万人だった来場者数を40万人まで「V字回復」させた。その理由はどこにあるのか。個性集団とも言える飼育員たちの「チームワーク」と「仕事観」に迫り、組織活性化のヒントを探る――。


 水槽内の生き物を見るよりもその脇に貼られた手書きの解説(POP)を読んで楽しんでいる客のほうが多い。館内を歩いているスタッフには気軽に話しかけられて、生き物についての「生解説」を聞くこともできる。驚くほどのアットホームさ。それが竹島水族館の特色だ。

phot 「年末大掃除イベント」に静岡県から参加したカップル。結婚前に体験する初めての共同作業だ

「働き手」まで県外から引き寄せる小さな水族館

 週末にもなれば入場待ちの行列ができるこの水族館が引き寄せているのは客だけではない。「ぜひ働きたい」と志望する若者が絶えないのだ。静岡県島田市出身の鈴木絢人さん(22歳)もその一人。予算規模も敷地面積も小さい竹島水族館を知ったのは専門学校が実施した学外実習でのことだった。

 「なんだこの水族館は!すごいなーと思いました。カサゴがいるブロックをマンションに見立てたり、ウツボの気持ち悪さをいじっていたり……。表現や展示のやり方が他の水族館とは全然違うんです」

 鈴木さんは2017年4月に入社する前から竹島水族館でアルバイトとして働き、「カピバラ王子」こと塚本祐輝さん(関連記事)と一緒にカピバラの飼育とショーを担当。現在は人気コンテンツに成長したカピバラショーで意識しているのはやはり「アットホームさ」だ。

 「最初のうちは緊張して、カピバラの生態解説で終わっていました。でも、お客さんには子どももたくさんいるので難しいことを言っていても仕方ありません。塚本さんのまねをしながら、お客さんに喜んでもらうように心掛けています」

 アシカやイルカとは異なり、カピバラはとてもマイペースな動物だ。鈴木さんがエサで必死に誘導してもまったく動かないこともある。そんなカピバラを、愛情を込めて「いじる」ことで、観客との距離がぐっと近づくのだ。場の空気が温まってくると、鈴木さんは客にも「もうちょっと驚いてもらってもいいですか?」などとツッコミを入れる。

 「お客さんの反応を見ながら話す内容を変えることもあります。声を掛けてもらえることもあるので、お客さんの顔は自然と覚えます。カピバラショーは午前と午後にやっているのですが、わざわざ東京から来てくれたお客さんが同じ日に二度も見に来たときにはうれしかったけれど困りました。話す内容を全て変えるのは無理ですし……」

 まるで噺家(はなしか)のような悩みである。鈴木さんが一人一人の客と真剣に向き合っている証拠でもある。

phot 専門学校生だったころの鈴木さんを感動させた「カサゴマンション」。竹島水族館の遊び心が伝わってくる
phot 気持ち悪さで大人気のウツボ軍団。振り切れた自虐ネタは竹島水族館の得意技の一つだ
phot 鈴木さん(左)と先輩社員の塚本さん。2人とも恥ずかしがり屋なので、普段は目を合わせて話さない
phot カピバラショーは平日でもこの人気。「お手」をしただけで拍手を要求するハードルの低さが受けている
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