また、こうした育成に取り組む上では、上司が伴走することも不可欠だとしている。具体的には、(1)はじめは営業現場に上司が同行して全てのプロセスをこなし、(2)慣れてくると、商品説明など一部の役割を若手に任せ、(3)説明が上達してくると、メインの対応を若手に任せて上司はサポートに徹し、(4)最後に単独訪問にチャレンジさせる――といった流れが望ましいという。
「『今回は関係構築が目的』『今回はクロージングを目指す』などと、往訪の前に意味付けを行うとより効果的です。上司が横にいると『出しゃばると怒られる』と委縮して発言をためらう若手もいるので、『ここまでは説明していいよ』と事前に役割をはっきりさせたり、営業トークの苦手分野を事前にロールプレイングさせたりして、不安を解消すると、スムーズに発言するようになります」
上司世代は、簡単なあいさつや商品知識を覚えた段階で「行ってこい!」と現場に放り出され、失敗する中で成長していく場合が多かったというが、今の若手には逆効果。営業同行の際も教え方にはコツがあり、「自分の仕事ぶりを見せつけ、『どうだ、オレはすごいだろ!』と自慢しても若手はついてきません。私はかつて、新規開拓の際に名刺交換を断られる場面を若手に見てもらい、『上司でも失敗するんだ』と印象付けることで、若手が持つチャレンジへの抵抗感を薄れさせたことがあります。上司があえて失敗する姿を見せるのも、若手の意識を変える一つの手かもしれません」と的場氏は指摘する。
「若手を育てる上では、会議などで『なぜ売り上げが低いのか』と“公開処刑”することもやめましょう。成功事例を共有したり、業務のネックになっている点を解消する方法を話し合ったりと、人が集まるからこそできる取り組みをやるべきです」
読者の中には、一連の指導方法に対して「手厚すぎる」「ここまでやる必要があるのか」という疑念を抱く人がいるかもしれない。だが的場氏によると、「今の若手は“先行投資型人材”」。戦力化までに時間はかかるが、いったん自信と経験を身に付けると、能動的に行動して大きな成果をもたらすポテンシャルを秘めているというのだ。
的場氏は「AI(人工知能)の時代を勝ち抜くには、若手の活躍が不可欠です。企業は育成担当の上司に過剰な負担がかからないよう、タスクを管理・調整し、全社的な教育体制をつくり上げてほしい。イノベーションはそこから起きるはずです」と話している。
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