「多くの上司が、若手営業が自分から行動しないことに頭を悩ませている」――。リクルートマネジメントソリューションズのエグゼクティブコンサルタント、的場正人氏は、このほど開いた記者会見でこう指摘した。
多くの企業で営業部門のコンサルティングを手掛けてきた的場氏は、上司が若手に「とにかく客先を訪問しなさい」「失敗を恐れずに挑戦しなさい」「現場では一方的に話さずヒアリングしなさい」などと指示しても効果がなく、若手が積極的に行動しようとしないケースを数多く目の当たりにしてきたという。
こうした腰が重い若手は上司の指示に納得しておらず、「なぜ、やみくもに客先を訪問すべきなのか分からない」と反発したり、「顧客が求めていない商材を売り込むと、相手の迷惑になる」などと考え、往訪を“自粛”したりするケースが多いとしている。
若手営業はなぜ働き方を変えないのか。なぜ上司と分かり合えないのか――。
的場氏は「若手が悪いわけではありません」と前置きした上で、これらの問題が起きる要因を「企業の育成システムの不備による若手の経験不足や、世代間の価値観の相違が生じているためです」と説明する。
「ビジネス界では競争が激化し、上司や先輩が実務に追われたり、効率化のためにかつては若手に任せていた仕事を外注したりすることが増え、育成に深くコミットできない例が増えています。そのため、成長につながらない簡単な仕事を与えたまま放っておいたり、重要な仕事をいきなり任せてつぶしてしまったりする例が多く、若手に社会で求められる力が身に付かないままになっています」(的場氏、以下同)
「教育の指針が変化したため、若手は幼少期に親や先生に叱られたり、友達とケンカをしたりした経験もそう多くありません。また、ゼロから新しい遊びを考えるのではなく、テレビゲームなど既成の“ルールのある遊び”をして育っています。そのため、若手は上司の世代と比べると、困難を自分の力で乗り越えたり、正解がないことに挑んだりする経験が不足しているのです」
では、こうした環境に置かれてきた若手は、どうすれば失敗を恐れず能動的に働けるようになるのか。的場氏は「まず大まかな目標を設定し、そこから逆算する形で、達成に必要な要件を列挙してください。そして、それらを1つずつクリアする“小さな成功経験”を繰り返し積んでもらうことが重要です」と提言する。
具体的には、1年目では「成長する土台を築く」という目標を設定。(1)商品の基本的な説明を覚える、(2)周囲の協力を得ながら仕事を回す、(3)ヒアリングからクロージングまで、商談のプロセスを繰り返し経験する――などを要件とし、達成を目指してもらう。そして、2年目以降は「自律的に仕事を回す」など、レベルに合わせて目標の難易度を引き上げると、若手は徐々に自信を付け、能動的な仕事の仕方を自然と学んでいくという。
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