#SHIFT

改正入管法で浮き彫りに 日本語学校の“知られざる”役割「労働者」の前に「留学生」を(4/6 ページ)

» 2019年01月30日 06時30分 公開
[橋本愛喜ITmedia]

留学生の働く実態

 外国人留学生は、周知の通り、資格外活動許可を受ければ、決められた範囲内でアルバイトをすることが許されている。その条件は実に幅広く、パチンコ店、麻雀店、ゲームセンター、キャバレー、スナックなどの風俗関連の業種以外なら、勤務先や時間帯を特定することなく、週に28時間まで就労できる(当該教育機関の長期休業期間にあっては、1日8時間以内)。

日本語学校の卒業式に袴を着るジュエットさん 日本語学校の卒業式に袴を着るジュエットさん

 現在、都心のファストフードやコンビニエンスストアのレジ前に立っている外国人の多くは、こうした日本の教育機関に所属する留学生であろう。

 日本で懸命に働く外国人留学生は、主に以下のいずれかである場合が多い。

 1つは、翌年分の学費や生活費を稼がなければならない留学生だ。

 17年度は6万1000人を超えるなど(日本学生支援機構調べ)、昨今留学生として来日する数が急増しているベトナム人の場合、現地の平均年収は40万円弱。それに対し、日本へ留学するには、送り出し機関への手数料や、現地で通う学校の1年分の学費など、合計150〜200万円が事前に必要となる。平均年収420万円の日本水準で換算すると、その必要額は1500万円にもなる。

 こうした物価水準の違いから、彼らは自国で最低限必要な資金だけを集め、2年目以降の学費や生活費を日本でのアルバイトで賄うのだ。

 前出のジュエットさんも、日本語学校在籍当時、レストランや物流大手企業でアルバイトをしていたという。

 「来日前、ベトナムで準備した金額は200万円です。大学に通いながらアルバイトして少しずつ貯めましたが、やはり両親や親戚に援助してもらった部分が多いですね。日本でのアルバイトは1カ月10万円ほどでしたが、やはりこの程度では、翌年の学費を貯めながら都内で一人暮らしをするには到底足りず、当時は同じ国から来た友人3人と一緒に住んでいました」

地べたに食材を並べるのがベトナムスタイル。彼らはこうして日本で支え合いながら生きている 地べたに食材を並べるのがベトナムスタイル。彼らはこうして日本で支え合いながら生きている

 現在、問題になっている留学生のオーバーワークには、後述する「出稼ぎ留学生」以外にも、こうした金銭的にひっ迫した学生によるものも多い。実際、学校を欠席するほどオーバーワークしてしまう学生は、物価水準が日本よりも低い東南アジアの留学生が大多数で、欧米人留学生は、ほとんど存在しない。

 無論、学費捻出のためのオーバーワークもれっきとした不法就労となり、雇用者、留学生双方に罰則規定が存在する。最悪の場合だと、当事者は強制送還の対象になる可能性もある。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.