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改正入管法で浮き彫りに 日本語学校の“知られざる”役割「労働者」の前に「留学生」を(3/6 ページ)

» 2019年01月30日 06時30分 公開
[橋本愛喜ITmedia]

ベトナム人留学生の現実

 筆者が非常勤の日本語教師として活動していた3年前の教え子たちの中には、日本語学校の後に進んだ専門学校を卒業し、日本国内で働き始める学生が多くいる。ここ数カ月の間で、就職先が決まったという報告や、推薦状を書いてほしいと久しぶりに連絡をくれる子も少なくない。

 ボーテー・ジュエットさん(28)も、教え子の1人だ。

 自国ベトナムにある自動車関連の大学を卒業後、2013年に来日したジュエットさんは、都内の日本語学校に約2年間在籍。遅刻欠席もほとんどすることなく真面目に授業に取り組み、日本語や日本の風習を着実に習得した。その結果、他の学生よりも早く日本企業に就職。自信と知識を身に付けた後、より専門性が求められる企業への転職も果たした。現在の職場には、外国人は彼しかいないという。

 自身が日本企業に就職・転職できた要因は何だったか分析してもらったところ、「日本の習慣や文化的差異に対する深い理解があったから」だと即答する。

 「日本語学校時代に習得した言葉や文化は、その後、日本社会でうまくやっていく上で大変重要なことばかりでした。日本で働けば、少なからず日本人と働くことになる。彼らは日本語学校の先生方とは違い、分かりやすい言葉を選んで話してはくれませんし、職場の年齢層によっては、曖昧(あいまい)な表現や流行語、略語などが飛び交う。こういう言葉は、自国で身に付けるのには限界があり、ある程度日本で生活をしないと理解できません。

今回の取材で、ジュエットさんが友人のベトナム人にも回答を募ってくれた。漢字もうまい 今回の取材で、ジュエットさんが友人のベトナム人にも回答を募ってくれた。漢字もうまい

 来日してすぐに現場で働くのではなく、『慣れる時間』として少しの間でも日本語学校に通えば、こうした言葉だけでなく、日常生活で抱いた疑問や悩みを翌日すぐに先生に相談し、解決できる。我々外国人が、日本の水準にあった労働者として活躍するならば、互い(日本人・外国人)のためにも、やはりその前に学生として生活する時間が必要だと思います」

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