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女性の“成長意欲が低い”は本当か?管理職になりたがらないワケ(3/5 ページ)

» 2019年02月05日 05時00分 公開
[砂川和泉パーソル総合研究所]
株式会社パーソル総合研究所

成長意欲が高いのに管理職になりたくない。その理由は?

 では、なぜ女性は成長意欲が高いのに管理職になりたがらないのでしょうか。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングが15年に公表した「女性管理職の育成・登用に関する調査」によると、女性は「管理職は家庭(プライベート)との両立が困難」と考えて管理職になりたくないと考える割合が男性に比べて高く、「管理職の多忙なイメージ」が子育て等の家庭生活との両立を困難と認識させ、女性の昇進意欲を低下させていると指摘しています。

 子育てが両立困難の主な要因なのであれば、子どもがいない女性は子どもがいる女性よりも管理職意向が高くなると考えられます。しかし、今回の調査データで家庭の状況(未既婚・子ども有無)別に管理職意向を見たところ、男女ともに「未婚・子なし」で管理職意向が低く、子どもがいる女性は子どもがいない女性よりも管理職意向が高い傾向が見られました(図4)

 日本においてはいまだなお、第1子出産を機に正社員として働く女性の約3割が辞めるなか(※1)、もともと管理職意向がある人が出産後も働き続けていることも考えられますし、既婚男性に関しては、家庭を持ち、一家の大黒柱として出世することをよしとする規範意識が根強く残っているのかもしれません。

図4 管理職意向<ライフステージ別>【ベース:20代・30代正社員(非管理職)】 図4 管理職意向<ライフステージ別>【ベース:20代・30代正社員(非管理職)】

 いずれにせよ、未婚や子どものいない女性でも管理職意向が低いことから、「家庭(プライベート)との両立困難」で管理職になりたくない、という女性の思いは、子育てとの両立に限られるものではなさそうです。少なくとも、しばしば言われる「両立困難」という理由は、深掘りする必要がありそうです。

 管理職になりたくない人たちにとって「子育て等の家庭との両立」は表面的な断り文句であり、実のところは長時間拘束されて過大な責任を負担する旧来型の管理職のあり方に疑問を呈しているのかもしれません。

※1 国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査(夫婦調査)」(2015)。対象は子どもが1人以上いる初婚同士夫婦であり、第1子出産前後の正規職員(妻)における就業継続率は2010〜14年で69.1%。

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