コラム
» 2019年02月05日 05時00分 公開

管理職になりたがらないワケ:女性の“成長意欲が低い”は本当か? (5/5)

[砂川和泉,パーソル総合研究所]
株式会社パーソル総合研究所
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時間・場所に縛られない働き方が未来の管理職のあり方を変える

 「副業・兼業」や「クリエイティブ・オフィス」、「テレワーク」が推進されていると女性の管理職意向が高いということをどのように捉えたらいいでしょうか。

 まず、「副業・兼業」および「クリエイティブ・オフィス」の推進に関しては、「時間による成果やコミットメント」を求める風土ではなく、「創造性」や「時間にかかわらないパフォーマンス」を求める風土への転換が促される可能性があります。

 Kato,Kawaguchi,and Owan(2013)は企業内人事データの分析により、女性においては長時間労働の人が昇進しやすいという関係を示していますが(※2)、副業・兼業やクリエイティブ・オフィスが推進されることで、時間によるコミットメントを重視する風土が形骸化し、時間的制約が生じやすい女性も勤務時間をセーブしながらキャリアを伸ばしやすい環境が形成されると推察されます。

 欧米では、「週4日勤務の管理職」や「管理職の役割を複数人でシェアリングする(ジョブシェアリング)」などのフレキシブルな管理職の形態も見られます。時間によるフルコミットメントを重視する風土が見直され、そうした柔軟な管理職のあり方が実現すれば、管理職は女性にとっても魅力的なポジションになり得るのではないでしょうか。

 一方、「テレワーク」の促進は、場所の拘束からの解放を意味します。従来も、子育て中の女性にはテレワークが特権として認められることはありましたが、最近では制度を全員に適用する企業も徐々に増えてきています。他のメンバーもテレワークで働くようになれば、管理職になっても気兼ねなく制度を利用できる環境が整うと考えられます。

※2 "Dynamics of the Gender Gap in the Workplace: An Econometric Case Study of a Large Japanese Firm," with Takao Kato and Daiji Kawaguchi, Discussion Paper 13-E-038, May 2013.

まとめにかえて

 繰り返しになりますが、本稿で示したように、女性が「管理職になりたがらない」からといって「成長意欲が低い」わけではありません。「成長意欲」という仕事に対する前向きな姿勢があっても、旧来の管理職のあり方ではやっていけないと感じていることが問題なのです。

 今回の調査結果からは、「副業・兼業制度」「クリエイティブ・オフィス(創造性を重視した執務スペース)」「テレワーク」の推進といった、より多様で柔軟な働き方へのシフトが、女性の管理職意向を高める可能性が示唆されました。もちろん、厳密な効果を測定するには制度導入前後における意向の変化の分析などが必要ですが、今回の結果は取り組みを推進する上でひとつの拠りどころになるのではないでしょうか。

 長時間労働の是正はファーストステップではありますが、その先に、従来の時間・場所を拘束される管理職のあり方が見直されるとき、女性にとっても管理職の仕事は実現可能で魅力的に思えるようになるのかもしれません。

調査概要 調査概要

著者プロフィール

砂川和泉(すなかわ いずみ)

パーソル総合研究所 研究員

大手市場調査会社にて10年以上にわたり調査・分析業務に従事。定量・定性調査全般において、企画から実査管理、集計・分析、報告書作成までの一連のプロセスを担当した他、クライアントが保有するID-POSデータの分析や各種予測モデル作成も経験。2018年1月より現職。


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