マーケティング・シンカ論

「無人コンビニ」は日本で誕生するのか 隠された論点に迫る焦点は「IT化」だけではない(2/3 ページ)

» 2019年02月07日 08時00分 公開
[服部良祐ITmedia]

ローソンの「商品をゲートに通す」未来型店舗

 慢性化する人手不足に対抗するため、コンビニ各社はITを活用した省人化店舗の開発を進めている。ローソンも18年10月に幕張メッセ(千葉市)で開かれたIT技術の展示会「CEATEC JAPAN 2018」で、未来型のデモ店舗を披露した。

 この店舗の目玉は、商品に付いている電子タグ(RFID)を活用した「ウォークスルー決済」だ。客はあらかじめスマホに専用アプリをダウンロードし、それを出口でかざしつつ、購入する商品を袋に入れてゲートに通す。電子タグを通じて商品の購入が認識されるシステムで、こちらもレジは無い。展示会当日は来場者がデモ店舗の体験に列をなした。

photo 「CEATEC JAPAN 2018」に出展したローソンの未来型店舗の店頭

 ただセブンと同様、ローソンも現状で完全な店舗の無人化は視野に入れていないという。同社で店舗の省人化プロジェクトを担当する次世代CVS統括部部長の秦野芳宏さんは「これだけ労働力が減るので、AIなどを活用しないとやっていけない」と省人化の必要性を強調する。一方で「(店舗)全体として無人化を目指す方針ではない。あくまで、顧客の満足に直接関与しない部分は人手でなくてもいいのでは、という発想」と説明する。

 秦野さんが「人手でなくてもいい部分」として挙げる例が、デモ店舗でも省かれていたレジ業務だ。現在、ローソンでは自分のスマホで商品をスキャンして決済できる「ローソンスマホペイ」の導入を進めている。18年11月時点で関東の12店舗で展開しており、19年中に1000店舗を目指す。「現在、コンビニではカウンターの内側に従業員2人を置いている場合が多い。でもそこに人はいなくてもいいのではないか。店内をきれいにしたり商品陳列をしっかりやるといった点も大事になってくる。従業員はカウンターより売り場にいるイメージになるだろう」(秦野さん)。

 秦野さんが強調するのは、「無人化」よりも「省人化」を進めることで、人手でなくてはいけない業務に従業員を集中させる戦略だ。「例えば出来立てのサンドイッチなど厨房で作る商品を客に提供する部分。もちろんある程度機械で(業務を)行うが、出来立てで他チェーンと差別化するために労働力をそこに割いていきたい」(秦野さん)。発注業務についても今はAIと集積したビッグデータを使った半自動システムを導入しており、空いた時間で「うちでは次に何が売れる」といった、個々の店の状況に合わせた商品戦略作りに従業員が集中できるようにしていくという。

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