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【第2話】現場任せでは成果は出ない!?「働き方改革」プロジェクトリーダーを命ず(3/3 ページ)

» 2019年02月15日 06時30分 公開
[柳剛洋ITmedia]
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日野下: 「上地さんか。役員会ではRPAの導入効果について熱く語っていたぞ」

片桐: 「ああ、彼女は知見も構想力もある聡明な人なんだが、『IT部門の責任と権限』にこだわるところがある。ITの役割はあくまでも支援で、各部門を啓蒙し、手を挙げたところにツールやベンダーを紹介するってスタンスなんだ。なまじ経験が豊富なだけに、RPAのようなツールは、導入部門が責任を持つべきでITが全責任を負うわけにはいかないって思っている。だから、結局は各部門のやる気次第ってことになるな」

日野下: 「想像してはいたが、各部門とも『やることはやった』って感覚なんだな。実は、社長のイメージする働き方改革のゴールはずっと大きい。『うちの業務の構造にメスを入れて抜本的に見直せ! 見直せるはずだ』と鼻息荒いよ。各部門との認識の開きは大きいな」

 ため息交じりの日野下に、ほろ酔いの武闘派・福島がかみつく。

福島: 「日野下、経企だって『事務局です』とか言って部門に丸投げしてきたんだから責任はあるぞ。いいか、正直言って、部門ごとに現場発で考えていくやり方では、これ以上の解は出ないぞ。言いたくないが、経企と違って、われわれは日常業務を抱えながらやってるんだからな!」

日野下: 「ああ。その点は重々承知している。俺自身がコミットしてプロジェクトの進め方を根本から見直さないと効果は出ないと思ってるよ……」

(続く)

働き方改革の2つのアプローチ 働き方改革の2つのアプローチ

【解説】働き方改革・2つのアプローチ

X製作所のこれまでの取り組みは、実質的には「現場型BPR・RPA改善」であったことが分かります。この場合、大きな効果が期待できる業務からメスを入れるわけではなく、各部門が気付いた施策から検討していきます。従い、現場(部門)の意思を尊重する漸進的アプローチと言えます。現場型のみのアプローチでは、効果は数%にとどまるのに対し、直下型では数十%の効果が期待できます。

PoCやトライアルを現場型で進めてきたものの、思ったような効果が得られず、思い切って直下型に転換する事例が最近顕著になってきました。主たる成果は、次の2点に集約されます。

(1)現場はマニュアル化や役割分担などで「うまく回っている」と思い込んでいる業務がある。そうした業務は実はボリューム(期待効果)も大きいが、現場は「問題だ」とは思っていないのでメスが入らない(現場型では俎上に上らない)。直下型アプローチによってここにメスが入り大きな効果につながる。

(2)現場型は、単一部門「内」の視点にとどまりがちだが、直下型アプローチによって部門横断の視座にたった改革が可能となる。部門に共通する業務や、部門間で相互に連鎖している業務を横串に検討することで大きな効果につながる。

X製作所も、この後、直下型に舵を切っていきます。


著者プロフィール

柳剛洋(やなぎ たけひろ)

アビームコンサルティング株式会社 戦略ビジネスユニット ディレクター

シンクタンクを経て、1999年アビームコンサルティングに入社。戦略・経営計画策定、業務改革、経営管理分野のコンサルティングに従事。


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