観光列車に本気出すJR北海道の“到達点”はどこか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/5 ページ)

» 2019年02月15日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

JR北海道で「THE ROYAL EXPRESS」を走らせる仕組み

 直流電車をどのようにしてJR北海道で走らせるか。その仕組みは意外と簡単だ。電車の動力を無力化し、客車として使う。ディーゼル機関車に引っ張ってもらって走る。ただし、これでは走行できても、客車内で使用する照明や空調などの電力を得られない。そこで、機関車と「THE ROYAL EXPRESS」の間にディーゼル発電機を搭載した電源車を連結する。

photo 報道資料に示された列車編成図。機関車2台と電源車を連結して難題を解決(出典:JR東日本報道資料

 かなり強引な仕組みだけれど、これなら「THE ROYAL EXPRESS」を運行できる。もともと伊豆急行はJR東日本の伊東線に国鉄時代から直通していた。線路の幅は一緒だし、車体の寸法も旧国鉄の規格だ。動力の問題は決着した。残る問題は保安システムだけど、これもJR北海道の機関車を使えば問題ない。

 報道資料には「北海道内での運転にあわせた編成について今後検討」とあるけれども、掲載されている図を見ると、機関車の略図はDE10形やDE15形に似ている。JR北海道では、夏の臨時列車「ノロッコ号」やSL釧路湿原号の補助機関車として使われている。

 では電源車はどうするか。東急電鉄は持っていないが、JR北海道はサービス用発電機を搭載した客車を持っている。SL釧路湿原号の専用客車「スハフ14形」と、ノロッコ号の客車「オハテフ510形」だ。

 ただし、どちらも観光シーズンに稼働するから、「THE ROYAL EXPRESS」には使わないかもしれない。他に考えられる方法としては、JR東日本の電源車が使える。寝台特急カシオペアで使われていた予備電源車「カヤ27形」だ。また、JR東日本の観光車両「リゾートエクスプレスゆう」という電車が水戸線などの非電化区間を走るときのために、電源車「マニ50形」を用意していた。荷物車の室内にディーゼル発電機を設置している。

 「リゾートエクスプレスゆう」は廃車となり、同じ色で塗装した「ゆうマニ」ことマニ50形も長野車両センターへ廃車回送されたという。長野車両センターには解体設備があり、使用済みの車両が送られると解体される運命である。しかし、ネット上のうわさによると、ゆうマニの解体は行われていないらしい。これを使うかもしれない。

 いずれにしても、これまでの常識を覆す試みである。機関車と電源車を連結すれば「THE ROYAL EXPRESS」の運行は可能ではある。しかし、まさか本気でやるとは驚きだ。「JRの辞書に不可能の文字はない」のかもしれない。

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