観光列車に本気出すJR北海道の“到達点”はどこか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/5 ページ)

» 2019年02月15日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

かつては「挑戦者」だったJR北海道

 懐古すれば、JR北海道は進取の気性にあふれた会社だった。1990年からデンマーク国鉄と提携し、鉄道施設や車両のデザインはJR九州より先んじていた。新千歳空港駅がちょっと異国情緒を感じるデザインになった理由だ。261系特急気動車の独特のデザインもデンマーク国鉄と協業した結果である。広大な北海道に散在する都市を結ぶため、キハ183系を高速化し、JR四国の振り子式気動車を参考に、寒冷地仕様の振り子式気動車キハ281系を開発、キハ283系で道内航空便とのシェア争いに勝った。

 JRグループのうち、観光用団体車両を積極的に展開した会社もJR北海道だった。85年に「アルファコンチネンタルエクスプレス」、86年に「フラノエクスプレス」、87年に「トマムサホロエクスプレス」、88年に「ニセコエクスプレス」と、次々に花形車両を生み出した。JR北海道は趣味的にも一般観光客から見ても面白い鉄道だった。

 それだけ頑張ったJR北海道だけど、唯一の失策は、保線や車両整備まで頑張らなかったことだ。厳しい自然、少ない予算という悪条件があったにせよ、安全を後回しにした。例えるなら、アパートや貸しビルのオーナーが借り主を探すために壁を塗り直したりネット接続を導入したりと付加価値を高める一方で、土台のひび割れを放置したようなものだ。そんなふうに屋台骨が揺らいでいった。

 現在のJR北海道は「安全」と「新幹線」に傾倒している。これは国などからの業務改善要求があるからだ。しかし、本当はJR北海道だってもうけたい。観光列車をやりたい。何しろ北海道には本州、四国、九州に引けを取らない大自然の景色があり、おいしい食材もある。観光列車を成功させる要因がそろっている。しかし、投資するおカネはない。

 今度の観光列車構想は国土交通省から促されたと報じられている。安全もいいけれど、経営が厳しいからには、営業もしっかりやりなさい。観光列車もやりなさい。と、少し風向きが変わった。ただし、お金がかかるから車両は作っちゃダメ。やりたいなら借りてきなさい。そういう事情のような気がする。

photo 「びゅうコースター風っこ」の運行予定区間。これに対して「THE ROYAL EXPRESS」は札幌付近から道東へ向かう路線が最有力候補(出典:JR東日本報道資料

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