メカニズムの4点目は、残業習慣が、上司から部下へと「遺伝」する、という点です。
どんな上司属性が最も部下の残業を増やしているかを分析したところ、最も増やしていたのは「若いころ、残業をたくさんしていた」という上司の過去経験でした。今でこそワーク・ライフ・バランスは誰もが知るスローガンですが、現在上司層にあたる層が新卒時には、終電帰り、タクシー帰りが当たり前の世代。こうした経験が「武勇伝」として部下に語られることも多く見られます。データを見ても、新卒入社時に「残業が当たり前の雰囲気だった」「終電まで残ることが多かった」といったことを経験した上司は、現在、部下に多くの残業をさせる上司になっていました。
より詳細な行動レベルで見ても、新卒時に残業文化に染まった上司は、「時間をかけて仕事をする部下を評価する」「自分の仕事が終わっても職場に残る」「これまでの慣習ややり方に固執する」といったマネジメント行動をする傾向が強くなっていました。こうした行動によって、部下の残業時間が長くなっているようです。
さらに興味深いのは、こうした傾向は、新卒時の組織だけでなく、転職した先の組織でも消えずに残っていたことです。上の分析も、「転職経験のある上司」に絞って分析しています。つまり、日本企業の残業体質は、上司−部下間という「世代」だけではなく、「組織」をもまたいで受け継がれているということです。
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