そして、もう一つ忘れてはならないのは、人は「正論だけでは生きられない」という隠しようのないリアルです。感情は常に理性を上回るリスクを抱えています。
だって、人間だもの。突然、相田みつを風の物言いになってしまいましたが、つい怒鳴ってしまったり、手を上げてしまったりすることもあるかもしれない。一生懸命であればあるほど、何度言っても分かってくれない子どもにいら立つことだってあるでしょう。
そんなときに「私はなんてダメな親なんだ」と、お母さんやお父さんたちが自責の念にかられない社会にしなきゃ、と思うのです。
ただでさえ「正解」だとされるものがあふれているご時世です。「体罰禁止」「子どもの人権」という言葉に、ある種の“美徳感”が漂うだけに、萎縮した子育てがはびこり、「褒める」ことだけを過剰に推奨する風潮が拡大しないことを願うばかりです。
最近やたらと「子どもの自己肯定感を高めるには褒めて育ててください!」などといった情報があふれていますが、「自己肯定感」の解釈には諸説あり、健康社会学者のアーロン・アントノフスキーの健康生成論的アプローチで考えると、「褒める」だけでは自己肯定感は高まりません。「どうやって叱るか?」が極めて重要です。
例えば、成績が悪かった子どもを頭ごなしに叱るのではなく、「あんなに頑張ったのに失敗しちゃったね」と、頑張りを評価した上で、本人が失敗した原因を考えるように仕向ける必要がある。自己肯定感は「良いところも悪いところも含めて自分を好きになる感覚」であり、自分自身を受け入れること。褒めるだけの子育ては、自己肯定感ではなく、「自己過信」するうぬぼれ屋さんを育てることにつながってしまうのです。
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