伝統は守るな、生かせ! 現代版「楽市楽座」を生んだ常識破りの挑戦“売りたい人”と“売れる人”をつなぐ(3/5 ページ)

» 2019年02月25日 07時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]

“連携の場”を模索し「気持ち悪い」と言われる

 二本栁さんが“地域産業の活性”を志すようになったのは、前職での経験がきっかけだった。廃校舎を活用したシェアオフィス「IID 世田谷ものづくり学校」のイベント企画の仕事をしていたころ、島根県隠岐の島や新潟県燕三条などのものづくりやブランド発信に携わった。

 その経験を買われ、ものづくりカフェ「FabCafe Tokyo」運営などを手掛けるロフトワークに入社。同社が企画し、経済産業省が支援する「MORE THAN プロジェクト」の企画運営を担当した。これは、日本の伝統技術や商材、サービスなどを海外に販売するため、地域の中小企業をサポートするプロジェクトだ。

photo ロフトワーク(東京都渋谷区)の二本栁友彦さん

 だが、このプロジェクトを進めるうちに、ある疑問を感じるようになった。一つ一つのプロジェクトは有意義だが、限られた期間や補助金の範囲内でしか携われない。そして何より、他のプロジェクトとのつながりがない。「外部との連携の場が必要ではないか」と考えた。

 そこで思い描いたのが、各地域が誇る“ジャパンブランド”をネットワーク化する「プラットフォーム」だった。だが、具体的なイメージはない。Webサイトを作るのか、リアルのイベントを開催するのか。形態すら見えないまま、まずは関係者に話を持ち掛けてみることから始めた。

 行政や事業者、バイヤー、メディアなど、片っ端から話をしに行った。3カ月ほどで200〜300人を訪ねたという。昼間は他の仕事があるため、早朝や夜の時間も使って「とにかく人に会いまくっていました」

 しかし、想像以上に風当たりは厳しかった。返ってくるのは「そんなこと、うまくいくはずがない」という言葉ばかり。過去にも似たコンセプトの取り組みはあったが、地域や組織の壁は高く、うまく機能した例は少ない。だから、当初は否定的な人が多かった。最も心に突き刺さったのは「そんな気持ち悪いことよく言うね。そんな話のために自分の時間を奪わないで」という一言。他にも「興味ない」「そんなことやって何になる」「自分には関係ない」などと言われ続けた。

 二本栁さんは「メリットをうまく伝えられなかった」と振り返る。確かに、まだ形の見えないプラットフォームが売り上げに結び付くとは考えにくい。「でも、本気でやりたい人は、つながる場さえあれば、それをきっかけにいろんなことを始められる。そう信じていました」

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