リッツ・カールトンに学ぶ バカッター対策としての水際作戦「行動」ではなく「意味」を教える(3/3 ページ)

» 2019年02月26日 07時35分 公開
[中嶋よしふみITmedia]
前のページへ 1|2|3       
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

リッツカールトンの「水際作戦」

 高級ホテルのザ・リッツ・カールトン・ホテルの日本支社長を務めた高野登氏は、カリフォルニアでリッツ・カールトンが新規開業する際、その面接スタイルに面接官である高野氏自身が度肝を抜かれたという。

 面接会場である開業準備中のホテルで応募者を迎えるのはドアマン、会場ではプロのミュージシャンがピアノを演奏し、いざ面接となると正装に身を包んだウェイターが応募者に飲み物を運ぶ。

写真はイメージ(写真提供:ゲッティイメージズ)

 客と同じ対応を応募者に提供する……このような「ふるい」にかけることで「とんでもないところに来てしまった、普通のホテルで働きたい」と考える応募者の半数が逃げ帰ったという。

 ここまでする理由はリッツ・カールトンがどのようなホテルか知ってもらうことが目的で、高度なホスピタリティを提供するリッツ・カールトンの文化に適応できるか、応募者に考えてもらうことが狙いだという。要するに水際作戦だ(参照・『リッツ・カールトンが大切にするサービスを超える瞬間』)。

 ウチのお店は衛生管理も店員の教育もきっちりやってますよ、という姿勢を見せる方法は、厳しく注意や監視をすることだけではないということだ。

 当然、バカッター対策を実行する際、現場の管理職や店長が経営者に対して「キレイごとを言いながらサービス残業をさせやがって……」と不満を抱えているような環境では、いつか別の形で会社に牙をむくだろう。社員も管理職も経営者も、仕事にプライドを持って誠実に取り組んでいるかが問われる。子どもが親を見て育つように、それがアルバイトの勤務態度にも反映される。

 このように考えていくと、バカッター対策は経営の根幹につながっていることが分かる。経営理念、クレド、ビジョンなど様々な呼び方があるが、会社の方針や経営者の思いを隅々まで伝えられるか? それがバカッター騒動への根本的な対策である。

執筆者 中嶋よしふみ

保険を売らず有料相談を提供するファイナンシャルプランナー。住宅を中心に保険・投資・家計のトータルレッスンを提供。対面で行う共働き夫婦向けのアドバイスを得意とする。「損得よりリスク」が口癖。日経DUAL、東洋経済等で執筆。雑誌、新聞、テレビの取材等も多数。著書に「住宅ローンのしあわせな借り方、返し方(日経BP)」。マネー・ビジネス・経済の専門家が集うメディア、シェアーズカフェ・オンライン編集長も務める。お金より料理が好きな79年生まれ。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.