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» 2019年03月07日 07時15分 公開

ブラック企業だけじゃない 「ワンオペ管理職激増」の深層働けど働けど報われない理由(2/5 ページ)

[熊野英生,ITmedia]

旧日本軍と共通する体質

 「生産性を高めよう」が日本企業の合言葉になっている。きっかけは2015年に安倍晋三政権が「働き方改革」を提唱したことだ。

 ところが今、多くの日本企業では、このように個人のオペレーションに強く依存したかたちで、生産性上昇を果たすことが求められている。本来、成果を得るためには組織が予算や権限を柔軟に駆使すべきであるのに、そうした発想で変革を考えることはない。あらかじめ決められた経費削減プランと、限られた人員……制約がさまざまにあるなかで、どうしようもなく、「個人の頑張りで何とかしろ」という発想へと追い込まれている。

 また、むやみに労働時間が長い傾向もある。あまり意味のある仕事とは思えないのに、やたらと作業量が多く課せられ、やってもやっても終わらない。挙げ句、サービス残業や自宅への持ち帰り仕事でなんとかしているという人も多い。時間外労働を規制すれば過重労働が減るというのは、甘い考えだ。

 個人のオペレーションに過度に依存する図式は、太平洋戦争中の日本軍と二重写しになる。『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』(ダイヤモンド社)では、次のように旧日本軍の体質を述べている。

 「日本軍はある意味において、たえず自己超越を強いた組織であった。それは、主体的というよりも、そうせざるを得ないように追い込まれた結果であることが多かった。往々にして、その自己超越は、合理性を超えた精神主義に求められた。そのような精神的極限追求は、そもそも初めからできないことが分かっていたものであって、創造的破壊につながるようなものではなかったのである」。

 現代の日本企業は旧日本軍と同じではないが、両者がまったく別だとも言い切れない。組織のなかに依然として、共通した体質をほのかに感じられる。しかも、組織が外部から制約を受けて危機に瀕(ひん)するほど、共通した体質がにじみ出してくるところが怖い。

 私たちは旧日本軍の失敗から学ぶことができる。『失敗の本質』では、過去の成功体験が意思決定の足かせになって、組織が自己革新を遂げることができなかったエピソードが繰り返し紹介される。旧日本軍は、自分たちは白兵戦(個人のオペレーション)に強みがあり、物量(予算)の差をはね返せると信じていた。この思い込みは、戦局が悪化していくほど逆に強固になる。そして敗戦ギリギリまで、一発逆転が可能だと信じていたのである。こうした発想は、現在の日本人の思考の奥底にも根強くあると思われる。

phot 個人に依存する図式は、太平洋戦争中の日本軍と重なる(写真提供:ゲッティイメージズ)

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