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» 2019年03月07日 07時15分 公開

ブラック企業だけじゃない 「ワンオペ管理職激増」の深層働けど働けど報われない理由(3/5 ページ)

[熊野英生,ITmedia]

個人に責任を押しつける企業と政府

 筆者は本書『なぜ日本の会社は生産性が低いのか?』の執筆を思い立ったとき、生産性に関する書籍をかき集めてみた。巷(ちまた)にあふれる書籍の多くは個人のスキルアップの指南書だった。これらはそれなりに役立つのだろうが、いくら個人が頑張っても、企業組織やチームの生産性は、全体の機能やビジネスモデルが変わらなければ、大きく向上することはない。個人の仕事術を無数に積み上げても、集団的な生産性の向上は難しいからだ。

 逆に言えば、個人の自己啓発や仕事術の本ばかりが多く出版されるのは、そこに強いニーズがあるからだ。つまり、生産性の向上のために、はなから組織やチームを改革の単位として考えない日本の読者には、個人のスキルアップという発想しかないのだ。

 さらに深読みすると、個人のスキルアップがこれほど望まれる背景には、世の中にワンオペの人がそれだけ多くなっているという事情もあるのだろう。1人仕事でうまく成果を引き出すためのコツ、手法を知りたい。だから本書では、そうした多くの人々のニーズも視野に入れて、組織・チームの生産性だけでなく、個人の生産性向上についても取り扱うことにした。

 しかし、個人単位で生産性上昇を考えることが本当に望ましいのか。筆者は疑問がぬぐえない。「ワンオペが増えたのだから、自然の成り行きとして、生産性を考えることも個人単位になった」という見方で、問題を素通りすべきではない。

 もしかすると、会社がワンオペ化を望んでそうなった部分があるかもしれない。つまり、企業の生産性上昇というミッションを、企業経営者が組織として考えることをせず、個人に丸投げしている側面が隠れている。この点には、少々こだわって考えてみたい。

 もっとも、組織・チーム、あるいは企業という単位で生産性の向上を考えようとしても、「自分は変革なんてできない」という人がほとんどだろう。そもそも自分には権限がなく、予算もない。変革などできないに決まっている、という制約だ。とくにチームの一員に組み込まれている人は、そうした制約をあらかじめ受け入れて、自助努力で生産性を上げることが求められている。「あなたは、自分に与えられた役割のなかでうまくやればよい」という不文律があって、あなたが組織を変えることを思考の外に置いてしまってはいないだろうか。

 その歪(ひず)みが最も如実に現れているのが「働き方改革」というスローガンだ。これはもっぱら「あなた個人の働き方を変える工夫はないのか?」と、個人に責任を押しつける発想を、さも当たり前であるかのようにあなたに求めているのである。

phot 個人の仕事術を無数に積み上げても、集団的な生産性向上は難しい(写真提供:ゲッティイメージズ)

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