日本に凱旋した北米マーケットの大黒柱RAV4池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/6 ページ)

» 2019年04月22日 06時30分 公開
[池田直渡ITmedia]

無骨で大きくなったRAV4

 さて、このRAV4。キムタクのCMに加え、それまでのはしご形(ラダー)シャシーではなく、乗用車同様のモノコックシャシーで作られたシティ派のSUVとしての使い勝手が受けてヒットモデルになった。以来4回のモデルチェンジを経て、今回の新型に至るわけだが、その間に日本での販売は一時中断していた。そしてしばらく見ぬ間に、RAV4の位置づけは大きく変化している。

 ある意味、やってみました式に始まったRAV4だが、現在ではトヨタにとってグローバルな大黒柱の一つである。主要なマーケットである北米の要望に合わせてボディサイズは徐々に大型化し、新型の全長は4600ミリ、全幅1855ミリ、全高1685ミリでホイールベースは2690ミリとなっている。

 そして17年、北米で長らくベストセラーの座を守ってきたカムリに代わって最量販車種になった。それはとりもなおさずトヨタの屋台骨を支える重責を担うことを意味する。

 トヨタの説明によれば、新しいRAV4は「よりラギットな方向へシフトする」とのことだ。言葉の意味としてはごついとか無骨なという意味になる。シティ派の反対と言った方がわかりやすいだろうか。

厳しい条件でも頼りになるクルマを目指して開発された

 トヨタのラインアップを見ると、このクラスのSUVでより都市型のモデルとしてはハリアーが控えており、同門での共食いを防ごうとすれば、ラギット方向へ振るのは常道といえるだろう。

 しかしそれは売る側の都合でしかない。ユーザーはなぜラギットなRAV4を選ぶ必然性があるのか? 一体どういう人に訴求するクルマなのか? その問いにRAV4のチーフエンジニアはこう答えた。「例えばアメリカで、家族に急病人が出た時、病院はすぐ側にあるとは限りません。例えどんな気象条件であっても、病人を病院まで送り届けられるクルマが家にあるということは大きな安心感を生みます」

 なるほど。それはよくわかる。ランドクルーザーだったらそういう生死を分ける場面では更にベターかもしれないが、日常使いで、それは燃費や乗り心地という日々感じる部分において、やはり我慢を強いられる部分がある。モノコックボディのRAV4は、普段使いで普通の乗用車とほぼ同様の燃費や乗り心地を持ちながら、いったん緩急あれば、悪条件をものともせず任務を遂行できる。その組み合わせは他と違うキャラクターになるだろう。

 さて、ではそれは日本ではどうなのかといえば、なかなかそれだけの走破性を求められることはないだろう。台風に直撃されて道路が寸断されたような状態で、通行規制も敷かれずに自己責任で走破をトライするような場面はおそらく日本には無いし、それ以前に道路が渋滞してしまって自分だけが走破性の高いクルマに乗っていてもどうにもならない。

 しかし、まあその機能が求められることが一切無いとも言い切れない。例えレアケースであってもそういう「もしも」をカバーすることに価値を見出す人にとっては頼もしい一台になるのかもしれない。

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