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デジタル化は漫画家のワークスタイルをどう変えたか――連載作家が語る漫画制作の今「AIの遺電子」作者に聞く(3/4 ページ)

» 2019年04月29日 05時00分 公開
[山田胡瓜ITmedia]

タブレット端末1台で、どこでも仕事ができる時代に?

 ペン入力に対応したタブレットPCの高性能化によって、「在宅」である必要すらなくなりつつあるというのも、ここ数年で感じていることです。

 デジタル環境で漫画を描く場合、昔はPCに加え、ペン入力のための「ペンタブレット」というデバイスが別に必要でした。しかし最近は、画面に直接絵が描けるタブレットPCやiPadが登場し、なおかつ描き心地がなかなか良くなってきて、プロユースにも耐えるようになってきています。つまり、タブレット端末と通信環境さえあれば、いつでもどこでも仕事ができるのです。

 例えば、私の友人で、「ラブロマ」「金剛寺さんは面倒くさい」などで知られる漫画家・とよ田みのるさんは、キャンプ場にタブレットPCを持ち込んで仕事をしてみたそうです。実際にはキャンプ日和すぎて仕事にならなかったようですが、デジタルを導入している作家でも、こんな働き方ができるのが最近の状況なのです。

一見普通のキャンプ風景
よく見るとテーブルの上にタブレットが……
キャンプ場で仕事! そういうのもあるのか(写真提供:とよ田みのる氏)

 とはいえ、環境の充実度で言えば仕事場にはかなわない部分もありますので、どの程度の作業が外でできるのかは作家に寄りけりでしょう。とよ田さんはネーム作業とせりふの打ち込みは、外でできるとのことですが、本格的な原稿作業は、仕事場の大きな液晶ペンタブレットが必要といいます。

 私自身も本格的な原稿作業は自宅で行うことがほとんどです。大きなディスプレイをいくつか使って、資料やチャット画面を同時に見たいからです。しかし、トーン作業や原稿の修正などを出先で行うことは増えてきました。イベントや打ち合わせの合間などに、アシスタントだけが仕事を進めているような状況も時々あるのですが、タブレット端末があれば出先から修正指示をしたりするのも簡単です。

 ちなみに、外で仕事をする際は「Surface Book 2」の15インチモデルや、「iPad Pro」の12.9インチモデルを使っています。どちらもペン入力に対応し、「CLIP STUDIO PAINT」という漫画制作ソフトが利用できるので、自宅と同じような仕事が出先でもできるようになっています。

 Surface Book 2は自宅での本格作業も楽々こなせるような高性能モデルですが、外でしか利用していないというかなりぜいたくな使い方をしています(デジタルガジェットが好きなので、半分趣味のようなものです)。

「Surface Book 2」の15インチモデル。テキストの原稿執筆、調べ物、漫画執筆、完成原稿のチェックなど、1台でさまざまな仕事をこなせます

 漫画家というと、部屋にこもってひたすら机に向かっている不健康なイメージが持たれがちで、実体験としてあながち間違いではないのですが、タブレット端末片手にあちこち飛び回りながら漫画を描くこともできる時代になってきています。私もデジタルツールを活用し、日々の行動範囲をもう少し広げていきたいと思っています。

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