新型プジョー508は魅力的だが……池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/4 ページ)

» 2019年04月29日 08時05分 公開
[池田直渡ITmedia]

乗って楽しく、見てカッコいいクルマに特化して勝負

後ろ姿もスタイリッシュ。かつてスポーツカーは後ろ姿が重要といわれた。508はスポーツカーではないものの、後ろ姿は合格だ

 これから世界で戦うにあたって、グループPSAは残念ながら二番手グループにいる。グループ全体を見ればプジョー、シトロエン、DS、オペル、ボクスホールを束ねる欧州2番目の自動車メーカーではあるが、CASEなどの先端技術的にも販売的にもトップグループと同じレベルで戦うのは厳しい。だからこその選択と集中であり、ジャーマン3が作り出したトレンドをさらに大胆に推し進めたわけだ。今世界の自動車産業をリードしている日本とドイツに、フランスやイタリアのメーカーが挑もうとするならば、相手が不得意なジャンルであるデザインに賭けるのは敵と己をよく分かっていると思うし、クレバーな戦術だと筆者は思う。

 さてそのデザインだ。とにかくスタイルやテイストがウリになるだけの濃口のデザインをやり抜くのがここ最近のPSA流。とはいってもブランドによる濃淡はそれなりに付けられていて、プジョーブランドのそれはDSブランドほどギリギリまで攻めていない。時計などの精密工芸品をモチーフにするDSに比べれば、プジョーはまだクルマらしい世界に留まっている。エクステリアに関する限りモチーフはクーペであり、それが4枚のドアとハッチバックゲートを備えるに過ぎない。

 リヤシートへの一切の未練を断ち切ってスタイルを妥協しない。徹底的にデザインを重視し、ルーフラインを最優先で決めてある。そういう思い切りに同意できる人が乗るクルマだと思う。大人4人で乗りたい人は同じシャシーのSUV、5008を買ってくれという割り切りだ。

 そういう生活感を切り離したが故に、508はかなり濃厚にリゾート感を醸し出している。ドイツブランドのクーペ風セダンがどこかセダンから抜け出せずフォーマルな軸を持つのに対して、508は明らかにクーペ寄りで、デザインのテイストがずっと開放的だ。

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