クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向
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» 2019年05月27日 07時07分 公開

池田直渡「週刊モータージャーナル」:ホンダの決算 バリエーション7割削減の意味 (3/5)

[池田直渡,ITmedia]

無駄なバリエーションを削減し3分の1に

 しかしながら、ホンダはここしばらく別の課題を抱えている。それは無駄な製品の多さである。

 八郷隆弘社長はスピーチの中で以下のように述べた。

ホンダの八郷隆弘社長(写真はホンダジェット発表時)

 私は、社長就任以来「強い商品づくり」と「地域の協調と連携の強化」により、強いホンダを作り上げると発信してきました。中でもホンダの強みである「グローバルモデル」と「地域専用モデル」の強化に力を入れてきました。

 現在、グローバルモデルは、シビック、アコード、CR-V、フィット/JAZZ、ヴェゼル/HR-Vの5機種となり、四輪車販売の6割を占める強い商品になりました。また、地域専用モデルは、日本のNシリーズ、北米のPILOT、中国のCRIDERなど、各地域の成長の源として重要な役割を果たしています。

 しかし、必要以上の地域ニーズへの対応を各地域で個別に進めた結果、モデル数、そしてグレードやオプション装備の組み合わせである”派生”の数が増え、効率が落ちてきたと認識しています。そこで、グローバルモデルと地域専用モデルの商品魅力と効率化の両立を目指し、「地域の協調と連携の強化」と「クルマづくりの進化」の2つに取り組みます。

 この派生モデルの削減については少々分かりにくい。事業説明に対する質疑応答でも、多くの記者が「車種数の削減」と理解した質問を繰り返していたが、ホンダが言っているのはそういうことではない。

 例えばグローバルモデルにおいて、日本は右ハンドル、米国は左ハンドルである。これは重要なローカライズであって、台数の少ない日本のモデルを合理化のために左ハンドルに統一してしまえというのは現実的ではない。

 しかし、ローカライズはそういう置き換え不可能なものだけではない。例えば「米国では明るいシート生地が求められ、日本では暗い色のシート生地が求められる」というようなことがあったとする。ちなみにこれはあくまでも例え話であってそういう事実があるわけではないことは念を押しておく。

 さて、ある時期そういうニーズがあったとしても、はやりは巡る。ある時から米国でも暗い色のシート生地が受けるようになって、暗い色が加えられたとする。追加するのは簡単だ。だが、そこで「いや待てよ? 明るい色はこれからも必要だろうか?」と疑念を持ち、廃番にするのはなかなか難しい。

 これまで明るい色の生地を選んでいた人は「無ければ無いで暗い色でも全然構わない」と思っているのか、「やっぱり明るい色でなければ買いたくない」と思っているのかは分かりづらい。

 リスクを取りたくない担当者は「とりあえず」これまであったバリエーションを温存してしまう。こうしたことが繰り返されていくと、コレステロールがたまるようにどんどん無駄なバリエーションが増えていく。

 シート生地ひとつとっても、本当に必要かどうか誰も確認していない「明るい色の生地」が習慣的にバリエーションにあることで、新型車の開発時に手間が増える。購買にも、生産にも部品保有にも手間がかかる。そして、販売の現場でも多すぎる選択肢はユーザーのストレスになる。

 そういうことは意識的に減らしていかない限り、あらゆる部分で増えていく。特に人のリソースを食う部分の負担はボディブローのように効いてくる。だからホンダは特にグローバルモデルについて25年までにバリエーションを3分の1に削減しつつ、反対に地域専用モデルでは地域への特化を進めようとしている。

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