復活の兆しがある「社内運動会」は、本当に組織を活性化するのかスピン経済の歩き方(4/5 ページ)

» 2019年05月28日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

大人のための「自己満足イベント」

 という話を聞くと、じゃあなぜそんなものが教育現場で今や当たり前のようにやられているのだ、と不思議に思うかもしれないが、そのあたりはちゃんとチコちゃんも番組内で説明していた。

 「競闘遊戯会」の効果に目をつけた初代文部大臣の森有礼が、全国の学校で実施することを義務付けたのである。なぜそんなことをしたのかというと、「日本」のためだ。

 『チコちゃんに叱られる!』の中では、森のことを「一橋大学の創設者で明治六大教育家に数えられる」なんて感じで紹介していたが、実はもうひとつ有名な顔がある。それは「教育現場と軍隊の融合」を目指した「愛国者」である。

 その動かぬ証が、森が運動会とともに義務化した、兵式体操だ。軍隊式の集団訓練を通して、体を鍛えるとともに愛国の士気を高めることを目的としている。この森が推し進めた「教育現場の軍隊化」は130年を経た現在も脈々と受け継がれている。令和日本の子どもたちもしつけられる「気をつけ」「前へならえ」「全体進め」は、この兵式体操を続けているだけなのだ。

 なんて話をすると、「ははん、さてはこいつはサヨクで、運動会は軍国主義だとか言いたいのだな」と思うかもしれないが、別にそういうイデオロギー的なことを主張したいわけではない。これまで見てきたように運動会とは本来、働く者たちのために生まれたもので、働く者たちがやってはじめて効果がでるものだ。そういう「大人向けイベント」を、就労前の子どもたちに無理強いしてもうまく機能しないどころか、さまざまな問題が噴出してしまう、ということを申し上げたいのだ。

 運動会の本番や練習で、熱中症で子どもたちがバタバタと倒れている。子どもたち同士が仲間と楽しく運動をすることの面白さや、協力することを学ぶためならば、他にもっとやりようはいくらでもあるのに、なぜか炎天下のなかで、教師が怒声をあげながら、組体操や人間ピラミッドをさせられ、外国人が「ワオ! まるで軍隊だ」と驚くような行進をさせられる。

 「子どもたちのため」というのは建前で、教師や学校が自身の評価を上げることや、応援をする保護者たちの満足度を上げることが目的となっている。完全に「大人のための運動会」になっているのだ。

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