海外の鉄道ニュース記事をチェックすると「一帯一路」というキーワードをよく見かける。これは中国が進める広域経済圏構想で、中国国内にとどまる話ではなく、ユーラシア大陸全体に及ぶ構想だ。そのなかで鉄道貨物輸送「中欧班列(チャイナ・レールウェイ・エクスプレス)」が交通インフラとして存在感を高めている。
数年前まで、中国の鉄道の話題といえば高速鉄道網の延伸だった。日本の新幹線技術も取り入れた中国版新幹線は、2008年に北京と天津を結ぶ京津城路として開業した。路線距離は約117キロ、最高速度は時速350キロだ。その後、既存路線の高速化や新路線の建設を着々と進めた。
中国高速鉄道といえば、11年に起きた温州市の脱線衝突事故の記憶が残る。しかし、その後大きな事故は報じられていない。安全対策と信頼の回復が適切に行われたようだ。結果、航空機より低価格で市民に支持された。中国高速鉄道は中国国土の東半分に網の目のような路線網を形成し、10年間で2万9000キロに達した。全てが同じ設計速度ではなく、時速200キロ、250キロ、300キロ、350キロの4区分となっている。
これとは別格の存在として上海リニアモーターカーがあり、最高速度は時速430キロだ。ただし、ドイツのトランスラピッド方式を採用したリニアモーターカー路線は、運行費用とドイツからの技術移転の交渉がまとまらず、中国大陸の高速鉄道の主流にはなれなかった。
19年は6800キロの高速鉄道路線を開業予定だ。これを含めて中国の西側未開発地域に約4万キロの新路線建設計画がある。03年の全国人民代表大会で決定した西部大開発を進めるためで、設計最高速度は時速200キロ以上だ。
一方、急速に拡大する高速鉄道の累積債務は85兆円を超えていると報じられた。北京〜上海間など主要都市間は利益率50%という好成績、一方で過剰投資による赤字路線も多いという。黒字の新幹線もあれば、赤字ローカル新幹線もある。日本の鉄道の赤字問題とはスケールが違う。それでも中国が新幹線建設を続ける理由は国内の景気対策といわれている。今後は米国との貿易摩擦による景気低迷を下支えする意味もありそうだ。
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