ワークマンの大ヒットは、「安いのに高機能でオシャレ」だからではないスピン経済の歩き方(2/5 ページ)

» 2019年06月04日 11時15分 公開
[窪田順生ITmedia]

「パイオニア」は他にもいる

 という話だけを聞くと、「ははあん、ワークマンの大ヒットに便乗したいわけね」とか思う人もいらっしゃるかもしれないが、「Z-DRAGON」が生まれたのは15年。しかも「JAWIN」に至っては08年。ワークマンが現在のようなPB商品開発に参入する以前からあって、テレビCMではまだ吉幾三さんが「行こう、みんなのワークマン」と歌っていた時代だ。

 さらにさかのぼっていけば、「パイオニア」は他にもいる。やはり広島で1901年に備後絣問屋として創業して、現在まで118年の歴史を誇る老舗作業服メーカー「コーコス信岡」だ。

 イケメン・美女たちがモデルを務める「電子カタログ」を見ていただければ分かるように、同社の製品も「作業服」という言葉とかけ離れたシャレオツぶりで、「女性にも大人気! 累計販売点数282万点の大人気商品」(カタログ)だという吸汗速乾ポロシャツ・Tシャツをはじめ、「WORKMAN Plus」で売っていてもおかしくないような商品が豊富にそろっているのだ。

コーコス信岡の電子カタログをみると、イケメンや美女たちがモデルを務めている(出典:コーコス信岡)

 では、全国各地のホームセンターに製品を供給している同社が、いつからそのようなワークマン路線へ進出したのかというと、今から25年も前のことだ。

 「同社は昨年から今年にかけ、カジュアル色の強いユニホームやスポーツウエア、アウトドア用ウエアを投入、個人消費者のニーズにも対応した品ぞろえを強化してきた」(日経産業新聞 1995年9月20日)

 ここまで言えばもうお分かりいただけただろう。絶好調ワークマンを語る際に、メディアや評論家が嬉しそうに語っている「プロ向け作業着の品質を生かして激安なのに高機能でオシャレ」というのは、別にワークマンが最初に考えたことでもなんでもない。むしろ、作業服業界的にはかなり昔から、どこでも当たり前のようにやっている「一般客獲得戦略」なのだ。

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