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まるで“ガンダム”の世界 Amazon創業者ジェフ・ベゾスが抱く「宇宙文明」の野望宇宙ビジネスの新潮流(3/3 ページ)

» 2019年06月05日 07時00分 公開
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AWSで衛星ビッグデータ市場を席巻へ

 このように宇宙空間での文明構築を目指すベゾス氏だが、その野望は地球上にも広がる。ターゲットの1つが、昨今ベンチャーなどの参入が相次いでいる地球観測衛星市場だ。センサーの高機能化や衛星数の増加から、衛星データのサイズは指数関数的に増加している。それらが現在直面しているのが、「いかにして衛星データなどを地上に効率的に落とし、活用しやすい環境に置けるか」という課題だ。

 Amazon系のクラウドサービス、Amazon Web Services(AWS)では、衛星データプラットフォームを構築するためのクラウド基盤提供を行ってきており、宇宙業界での市場シェアが非常に高い。民間企業だけでなく米政府機関の衛星データにも提供している。AWSが18年末に発表したのが地上局事業への参入だ。「AWS Ground Station」と呼ばれるサービスは、地上局とプラットフォームでの同時提供を可能にする。

photo AWS Ground Stationサービスのイメージ図

(出典:出典:AmazonによるYouTubeでの公式投稿「Introducing AWS Ground Station」

 AWSの地上局設備は、昨今観測衛星で使われるUHF(極超短波)やSバンドやXバンドといった周波数帯域に対応しており、当面計画されている12カ所の地上局のうち、既にオレゴン州の2カ所で始まっている。世界最大の観測衛星運用企業である米Digital Globe社などとも契約を交わしている。衛星番号登録を行えば半年前から利用予約ができるようになっており、1分単位の課金となる。

衛星で地球規模のインターネットインフラ構築

 加えて、通信衛星分野でも巨大なプロジェクトを立ち上げた。近年はソフトバンクが出資するOnewebやSpaceXといった企業が、数百機から数千機の衛星をうちあげて、次世代衛星通信インフラを作る巨大プロジェクトを進めている。こうした中、Blue Originは「プロジェクト・カイパー」と名付けられた3236機の衛星を打ち上げて世界中で高速ブロードバンド接続を可能にするコンセプトを発表した。

 まだ詳細は明らかになっていないが、自社の打ち上げサービスを活用して次世代通信インフラを垂直統合的に作ろうとする取り組みはSpaceXと同様だ。そして、「プロジェクト・カイパー」の計画責任者は、SpaceXが進める次世代衛星通信インフラプロジェクト「Starlink」を担当していた元副社長のラジーブ・バッドヤール氏ということもあり、今後SpaceXとの競争もさらに激化する可能性もある(なお、Starlinkでは1万2000機の衛星を打ち上げるという報道もある)。

 このようにジェフ・ベゾス氏とBlue Origin、AWSの動きは加速・拡大をしており、宇宙ビジネスのあらゆるセグメントに及びつつある。今後、宇宙産業全体や人類社会にどのようなインパクトを及ぼすのだろうか。

著者プロフィール

石田 真康(MASAYASU ISHIDA)

A.T. カーニー株式会社 プリンシパル

宇宙業界、自動車業界、ハイテク・IT業界などを中心に、政府・大手企業・ベンチャー企業等に対して15年超のコンサルティング経験。東京大学工学部卒。内閣府 宇宙政策委員会 宇宙民生利用部会 および 宇宙産業・科学技術基盤部会 委員。日本初の民間宇宙ビジネスカンファレンスを主催する一般社団法人SPACETIDE共同創業者 兼 代表理事 兼 CEO。著書に「宇宙ビジネス入門 Newspace革命の全貌」(日経BP社)。

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