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「まず、お手元の資料を御覧ください」で始まる会議が致命的にダメな理由今日から始める“ダメ会議”脱却術(2/2 ページ)

» 2019年06月06日 07時00分 公開
[榊巻亮ITmedia]
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具体的な例で「終了条件」を考えてみる

 もう少し具体的に考えてみよう。

 あなたは、上司から業務における課題と原因を調べるように指示を受けた。部下を集めて、まず課題について議論しようと思う。この状況で「会議のゴール≒終了条件」をどう考えればいいのだろうか?

○ダメな例:「課題を議論する」

 これは手段にすぎない。井戸端会議ではないのだから、議論することは目的ではない。状態で考えられていないのでNG。

△イマイチな例:「課題が出た状態」

 これは状態で表現されているが、具体性がない。どうやって「課題が出た」と判断すればいいのか分からないのでイマイチ。

○良い例:

1. 大小問わず参加者が感じている課題が出きった状態

2. 部をあげて解決すべきだと思う課題が出きった状態

3. 課題を出しきり、重要度の高い3つの課題に絞りこんだ状態

 「良い例」では、どれも「状態」で考えており、「終了条件に達したか」を確認しやすいのでGoodだ。参加者に「部を挙げて解決すべきだと思う課題は、だいたい出ていますか?」などと確認すればいいのだから。

 そして、終了条件の設定の仕方によって、参加者の意識も、質問の観点も、発言の粒度も変わるのが分かるだろうか。1と2では、発言する課題の粒度が全く変わってくる。論点も変わる。1なら「どうやって漏れなく細かい課題まで拾い出すか」がカギになるだろうし、2なら「部として取り組むべきかどうかを、どう判断するか」が議論のポイントになるだろう。

 終了条件が設定されることで、参加者は自然と終了条件に合致する状態を「作り出そう」と思うようになり、ベクトルがそろう。逆に、終了条件が不明確だと、何をどのくらい議論すればいいのか分からないから、好き勝手に話し始める。だから、議論が散り散りになるのだ。ゴールがうまく設定できれば、それだけでスムーズな会議が作れるだろう。

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終了条件を確認したらこう使え

 さらに、終了条件を確認したら「議論が脱線していないか」を終了条件に照らし合わせて考えると効果的だ。

 会議に出ていて「この議論、今すべきなのかな?」「話が逸れている気がするけど、この話、続けた方がいいのかな?」と感じることはないだろうか。いわゆる脱線である。

 明らかな脱線なら議論を元に戻せばいいのだが、多くは脱線かどうかの判断が難しい。下手に「これ、重要な話ですか?」などと口出すと、「バカヤロウ! めちゃ重要だぞ」なんて怒られたりする。

 そんなときに、終了条件があれば判断が楽になる。「この議論は、終了条件を満たすために必要だろうか?」と考えればいい。終了条件の達成に貢献しない議論は脱線である。どんなに重要な話であっても、どこか他所でやってもらった方がいい。

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 会議のゴールを明らかにする。一見当たり前のように聞こえるが、実は奥が深い。上手に終了条件を設定できると、全員のベクトルがぐっとそろう。そうなると、会議のスピードは軽く3倍になるだろう。下手な図解や付箋に挑戦するより、ずっと確実で効果がある。

著者プロフィール:榊巻亮

コンサルティング会社、ケンブリッジのコンサルタント。一級建築士。ファシリテーションとITを武器に変革プロジェクトを支援しています。

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連載:今日から始める“ダメ会議”脱却術

議論に集中できない、参加者が内職や居眠りをしている――。そんな“ダメ会議”からどうすれば脱却できるのか。会議の生産性を高めるポイントを、榊巻亮さんの著書『世界で一番やさしい会議の教科書』『世界で一番やさしい会議の教科書 実践編』から紹介します。

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